大分県には、食卓に届く前に米を食べて育つ豚がいます。そのシンプルな特徴の背景にあるのが、県の統一豚肉ブランドである 米の恵み です。名前は「米がもたらす恵み」を意味し、肥育の最終段階で米を10%以上含む飼料を与えた豚の肉が対象です。
では、特別な品種なのでしょうか。そして、米は本当に味を変えるのでしょうか。短く答えるなら「いいえ」と「部分的には」です。このガイドでは、ブランドの仕組み、求められる検査、米を使った飼料についての研究結果、そして大分で味わえる場所を解説します。
早わかり:米の恵み
- 日本語名
- 米の恵み(「米がもたらす恵み」の意)
- 概要
- 共通の飼料基準と検査基準のもとで大分県内で育てられた豚肉の統一ブランド
- 地域
- 日本の南西部、九州にある大分県
- 飼料の基準
- 肥育の最終段階に約60日以上、飼料全体の10%以上の米を給与
- 検査
- オレイン酸などの成分を調べる脂肪分析、枝肉格付「中」以上
- 上位区分
- 米の恵みプレミアム:オレイン酸42%以上
- ブランドの立ち上げ
- 2016年12月に名称を発表
- 管理団体
- 大分米ポークブランド普及促進協議会
米の恵みとは?

米の恵みは、大分県で育てられた豚肉のブランド基準であり、豚の品種ではありません。大分県で育てられた豚肉は、協議会が定める飼料、検査、枝肉格付の要件を満たせば、このブランドの対象になります。
ブランドを管理しているのは大分米ポークブランド普及促進協議会です。大分県によると、協議会は県、農業団体、養豚・流通関係の団体で構成されています。新しい名称は2016年12月19日に知事へ報告されました。
名前の意味
米 はお米を、 恵み は自然からの恵みや授かりものを意味します。つまり、この名前は飼料そのものを指しています。また、大分の田んぼと養豚場のつながりもほのめかしており、この点は後ほど改めて取り上げます。
ささやかですが役に立つ注意点があります。ここでいう「米で育てた」とは、豚が米だけを食べているという意味ではありません。肥育の最終段階で、米はほかの飼料原料とともに与えられ、飼料の10%以上を占めています。
単一の農場ではなく、共通のブランド
米の恵みは基準なので、その下に大分のいくつもの豚肉ブランドが並ぶことがあります。公式ブランドサイトによると、独自のブランド名で販売されている豚肉も、基準を満たせば米の恵みとして認証されることがあります。たとえば、地元放送局のテレビ大分(TOS)は2026年に、九重「夢」ポークと中津の錦雲豚が認証品であると報じました。
そのため、1つのパッケージに2つの名前が表示されていることがあります。最初は戸惑うかもしれませんが、これは単に、農場のブランドが協議会の共通ブランド基準も満たしているということです。
米の恵みはどのように育てられる?

基準は簡潔ですが、それぞれに明確な役割があります。大分県はブランドの条件として次の4つを挙げています。
- 大分県内で飼育豚は大分県内で生産されたものでなければなりません。
- 飼料に米肥育の最終段階で、飼料全体の10%以上を米にします。
- 約60日米を含む飼料をおよそ60日以上与えます。
- 検査と格付脂肪のオレイン酸を測定し、枝肉格付は「中」以上である必要があります。
飼料に含まれる米
肥育の最終段階は、豚が出荷される前の最後の期間です。この期間に、生産者は飼料に米を10%以上混ぜ、約60日以上与えます。基準は最低ラインを定めたものなので、実際の米の配合割合は農場によって異なることがあります。
ただし、情報源では米の種類は特定されていません。記載は「米」とあるだけで、すべてが大分県産だとは書かれていません。したがって、米が常に地元産だと決めつけないのが無難です。
脂肪の検査
そのうえで、脂肪分析が認証の過程に組み込まれています。大分県によると、大分県畜産公社が食肉脂肪分析装置を使ってオレイン酸などの成分を測定しています。オレイン酸は、豚の脂肪に自然に含まれる一価不飽和脂肪酸です。
大分県の畜産研究者は、近赤外線を使う装置を中心にこの仕組みを開発しました。測定部位には肩の脂肪が選ばれました。そこでの測定は約12秒で済むためです。精度を確かめるため、80頭分の枝肉について、装置の測定値と実験室でのガスクロマトグラフィーの分析値を比較しました。相関係数は0.748でした。つまり、この装置はその校正に基づいて迅速な推定値を出すもので、サンプルを1つずつガスクロマトグラフィーで分析しているわけではありません。
枝肉格付
最後に、日本食肉格付協会が枝肉を格付します。米の恵みには「中」以上の格付が必要です。見落とされがちな工程ですが、これによってブランドは飼料だけでなく枝肉の品質も対象にしていることになります。
米の恵みと米の恵みプレミアムの違い

区分は2つあり、違いは一度わかれば明快です。認証されたすべての豚肉はオレイン酸の検査を受けます。ただし、プレミアムの表示ができるのは42%以上の豚肉だけです。
| 項目 | 米の恵み | 米の恵みプレミアム |
|---|---|---|
| 産地 | 大分県内で飼育 | 大分県内で飼育 |
| 飼料の米 | 10%以上、肥育の最終段階、約60日以上 | 標準と同じ |
| 脂肪検査 | オレイン酸などの成分を測定 | オレイン酸42%以上 |
| 枝肉格付 | 「中」以上 | 「中」以上 |
| 見分け方 | 米の恵みのパックシール | 米の恵みプレミアムのパックシール |
大分県、ブランド協議会、大分県の畜産研究報告に基づく。基準は改定される場合があるため、公式サイトでご確認ください。
豚肉が42%に達するのはどのくらいの頻度なのでしょうか。2017年、大分県の研究者は18の農場から23,499件の測定値を集めました。全体の平均は42.8%で、農場ごとの平均は39.8%から44.0%の範囲でした。ただし、個々の枝肉のうちどれだけの割合がプレミアムに該当したかは、報告書には記載されていません。
米を使った飼料で豚肉は本当に変わる?

ここから話はさらに面白くなり、少し複雑にもなります。米は豚の脂肪を変えることがありますが、その結果は飼料全体によって左右されます。
日本の研究からわかること
日本では、ほとんどの豚の飼料で主な穀物はトウモロコシです。このトウモロコシの一部を米に置き換えると、脂肪中のオレイン酸が増え、リノール酸が減るという結果が研究でよく見られます。たとえば、日本畜産学会の学会誌に掲載された2020年の岐阜県の研究では、トウモロコシの代わりに精米を与えました。背脂肪のオレイン酸は増え、リノール酸は減りました。
しかし同じ研究では、米ぬかを加えるとその効果が小さくなることもわかりました。さらに、玄米給与に関する農研機構の研究成果の概要では、オレイン酸が増えてリノール酸が減るという、締まりのよい脂肪と関連づけられる組成が確認されました。ある試験では、融点はまったく変わりませんでした。つまり、「米」は1つの効果をもつ単一の原料ではないのです。
大分県独自の試験の結果
大分県は2010年から2012年にかけて独自の給与試験を行い、トウモロコシを米で30%、50%、70%置き換えました。背脂肪のオレイン酸は米を与えた区で高い傾向がありましたが、その差は統計的に有意ではありませんでした。リノール酸は米が増えるにつれて減少し、融点には有意な差は見られませんでした。
その後、大分県で行われた小規模な試験では、2種類の完全配合飼料を比較しました。ある農場の飼料を与えた豚は脂肪中のオレイン酸が有意に多く、ガスクロマトグラフィーによる測定で41.6%対36.3%でした。その飼料には植物性の油かすがより多く含まれていましたが、研究ではそれを唯一の原因として特定してはいません。それでも、この結果は飼料のほかの部分も重要であることを示唆しています。
知っておきたいこと
米を使った飼料は豚肉の脂肪酸バランスを変えることがありますが、その効果は米の種類、使用量、飼料全体の配合によって異なります。このことは、飼料の基準だけに頼るのではなく、脂肪を直接検査することが役立つ理由の説明にもなります。
米の恵みはどんな味?

公式ブランドサイトでは、この豚肉について、甘みがあり、豚特有の強いにおいのない穏やかな香りで、舌ざわりがなめらかだと説明しています。また、その特徴を豚肉のオレイン酸含有量と結びつけています。大分県の商品紹介ページでは、脂の融点が低いとされていることも付け加えています。
もちろん、これらはブランド自身による説明であり、ブラインドテストによる食べ比べの結果ではありません。それでも、地元メディアのコメントも同じ方向を示しています。2026年3月のTOSの報道では、ある飲食店の店主が生姜焼きを「とても甘い」と評し、リポーターはしゃぶしゃぶを「しっとりして甘い」と表現しました。
では、実際にはどんな味を期待すればよいのでしょうか。ブランドの説明とこうした試食コメントに基づけば、食べる人は甘みを感じる脂、比較的穏やかな香り、なめらかな口当たりに気づくかもしれません。ただし、部位、鮮度、調理法によっても、それぞれの印象は変わります。
一般的な豚肉との違い

日本の一般的な豚肉も優れたものが多いので、これは良し悪しの話でもありません。本当の違いは、米の恵みが具体的で確認可能な基準を定めている点にあります。
| 項目 | 米の恵み | 米の恵みの表示がない豚肉 |
|---|---|---|
| 産地 | 大分県内での飼育が必須 | 地域を問わない |
| 飼料 | 肥育の最終段階で米10%以上 | 農場によって異なる。トウモロコシ主体が多い |
| 脂肪検査 | オレイン酸に関連する脂肪分析がブランド基準に含まれる | これに相当する共通の要件はない |
| 格付 | ブランド基準で「中」以上の格付が必須 | 要件は生産者やブランドによって異なる |
| 味の特徴 | 甘み、穏やかな香り、なめらかな食感(ブランドによる説明) | ブランドや農場によって大きく異なる |
日本のほかの豚肉ブランドは、別のアプローチをとっています。たとえば 鹿児島黒豚は、バークシャー種という品種を軸にしています。これに対し、米の恵みは飼料と検査を軸にしています。
米の恵みのおすすめの食べ方

ブランドサイトでは、とんかつ、しゃぶしゃぶ、とんてき、生姜焼き、ハンバーグ、餃子を提案しています。それぞれを簡単に紹介します。
- とんかつ: パン粉の衣をつけて揚げたカツで、通常はロースを使います。初めて味わうなら、ロースカツの周りの脂身は特徴を感じ取りやすい部分です。詳しくは とんかつ のガイドをご覧ください。
- しゃぶしゃぶ: 薄切り肉を熱いだしにくぐらせる料理です。薄切りなので、食感や脂の特徴がわかりやすくなります。詳しくは しゃぶしゃぶ のガイドをご覧ください。
- 生姜焼き: しょうが風味の豚肉料理で、定食の定番です。 生姜焼き のページで解説しています。
- とんてき: 濃いめのソースで味わう厚切りの豚肉ステーキで、 四日市で有名になりました。
- 餃子とハンバーグ: 皮で包んだ餃子と日本風のハンバーグで、どちらもひき肉を使います。詳しくは 餃子 のガイドをご覧ください。
調理のコツ
目安として、カツやステーキにはロースや肩肉、しゃぶしゃぶにはバラやロースの薄切りが向いています。まずは少量の塩か、大分特産の柑橘であるかぼすをしぼって味わってみてください。また、豚肉にはしっかり火を通しますが、必要以上に加熱しすぎないようにしましょう。良い肉でもパサついてしまいます。生肉を購入した場合は冷蔵保存し、パックに記載された期限までに使い切りましょう。
米の恵みを味わえる店・買える店

ブランド協議会は、販売店と飲食店の2種類の公式リストを管理しています。飲食店リストは県内と県外に分かれています。九重や竹田などの内陸の町を含め、大分県内の多くの町が掲載されており、東京、京都、大阪の店も含まれています。掲載内容は変わることがあり、メニューも保証されているわけではありません。
地元テレビの報道からも、どんな料理が味わえるかがうかがえます。2026年3月、TOSは竹田の定食店を訪れ、生姜焼きととんかつを紹介しました。また、大分市の県庁近くにある、九重「夢」ポークをカツ丼やしゃぶしゃぶで提供する店も訪れました。
店頭では、米の恵みのパックシールを探しましょう。TOSはこれを黄色い米のマークと紹介しています。プレミアムの豚肉には専用のシールが付いています。日本国内では、ふるさと納税でもこの豚肉が扱われています。出かける前に、次の点を確認しましょう。
- 公式ブランドサイトに掲載されている最新の飲食店・販売店リスト
- 訪問日に、その飲食店がまだ米の恵みを提供しているか
- 店にどの部位や商品の在庫があるか
- 移動中に生の豚肉をどうやって低温に保つか
日本国外で買える?
確認した情報源からは、公式の海外販売店や輸出プログラムを確認できませんでした。さらに、多くの国では国境を越えた肉の持ち込みが制限されています。そのため、現実的には日本で、できれば大分で味わうのがよいでしょう。
米の恵みが大分にとって重要な理由

このブランドは、国全体のより大きな取り組みとも合致しています。農林水産省によると、豚や鶏の飼料に使われるトウモロコシの約90%は輸入です。一方、1人当たりの米の消費量は1960年代からほぼ半減し、田んぼが十分に活用されなくなっています。
そのため、農林水産省は飼料用米を、田んぼを生産に活用し続け、輸入飼料穀物への依存を減らす方法として位置づけています。米の恵みはこの幅広い政策に沿ったものですが、このブランド自体の貢献度について公表されたデータは見つかりませんでした。
旅行者にとっては、このブランドは大分の食を探るきっかけにもなります。豚肉料理と合わせて、県の鶏の天ぷらである とり天を味わったり、日出に立ち寄って 潮トマトを味わったりしてみてください。
米の恵みについてのまとめ

米の恵みは品種ではなく、米は魔法の食材でもありません。その代わりに米の恵みが示すのは、大分県内での飼育、肥育後期の飼料への米の配合、脂肪分析、枝肉格付の最低基準という明確な基準です。さらにプレミアムの区分では、測定可能なオレイン酸の目標値が加わります。
大分を訪れたら、まずはしゃぶしゃぶやとんかつ定食のようなシンプルな料理で味わってみてください。そのうえで、ほかの 九州グルメも楽しんでみてください。
この記事の情報は2026年10月に最終確認しました。
米の恵みについてよくある質問
ブランドについて
- 米の恵みとは何ですか?
-
大分県で育てられた豚肉の統一ブランドです。豚には肥育の最終段階で米を10%以上含む飼料が与えられ、認証には脂肪分析と枝肉格付が含まれます。
- 米の恵みは豚の品種ですか?
-
いいえ。協議会が管理するブランド基準です。大分県で育てられた豚肉は、独自の名前をもつ一部の農場ブランドも含め、要件を満たせば対象になります。
- 豚の飼料にはどのくらいの米が含まれていますか?
-
飼料全体の10%以上で、肥育の最終段階に約60日以上与えられます。
- 米の恵みプレミアムとは何ですか?
-
上位の区分です。プレミアムの豚肉は、ブランドの脂肪検査でオレイン酸が42%以上でなければなりません。
検査と味
- どのように検査されますか?
-
近赤外線装置で肩の脂肪のオレイン酸などの成分を推定し、さらに枝肉格付が「中」以上である必要があります。
- 米を使った飼料で、オレイン酸は必ず増えますか?
-
必ずではありません。研究では、米が脂肪の組成を変えうることが示されていますが、その効果は米の種類、量、飼料のほかの部分によって異なります。
購入と食事
- 米の恵みはどこで食べられますか?
-
公式ブランドサイトに飲食店が掲載されています。大半は大分県内で、東京、京都、大阪にもあります。訪れる前にリストを確認してください。
- 日本国外で買えますか?
-
公式の海外販売店や輸出プログラムは確認できませんでした。いちばん手軽に味わう方法は、大分を訪れることです。
参考文献
- 大分県 – 県統一豚肉ブランド「米の恵み」についての知事報告(2016年12月19日)(2026年10月閲覧)
- 大分米ポークブランド普及促進協議会 – 米の恵み:大分で育った豚肉(2026年10月閲覧)
- 大分米ポークブランド普及促進協議会 – 米の恵みを味わえる飲食店(2026年10月閲覧)
- The Oita (Oita Prefecture) – 米の恵みの紹介(2026年10月閲覧)
- 大分県 – What’s up Oita, Vol. 47(2017年1月)(2026年10月閲覧)
- 大分県農林水産研究指導センター – Research Now Vol. 101:豚脂肪中のオレイン酸の簡易測定法(2020年6月15日)(2026年10月閲覧)
- 大分県 – Shimura, H., Sato, K., Goto, M., Ono, M., Kudo, K., & Toshimitsu, A. (2018). 食肉脂肪分析装置を用いた豚脂肪測定システムの開発と、豚脂肪中のオレイン酸を高める技術(2026年10月閲覧)
- 大分県 – Akiyoshi, T., et al. 肥育豚への飼料用米給与技術の開発(2010–2012年の試験)(2026年10月閲覧)
- 農研機構 – 豚への飼料用米の給与(技術マニュアルの章)(2026年10月閲覧)
- J-STAGE – Yoshioka, G., Suzuki, K., Hayashi, K., & Mukaijima, K. (2020). トウモロコシの精米による代替、および精米と米ぬかの併用給与が豚肉の品質に及ぼす影響. Nihon Chikusan Gakkaiho, 91(4), 381–388(2026年10月閲覧)
- 農林水産省 – 飼料用米を活用した畜産物のブランド化(2026年10月閲覧)
- テレビ大分(TOS) – 米で育てたブランド豚「米の恵み」を使った料理を味わう(2026年3月23日更新)(2026年10月閲覧)

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