クリーミーでチーズがとろけ、ライスの上で焼き上げるドリアは、日本の洋食の中でも特にほっとする料理のひとつです。ドリアは昭和初期に横浜で生まれた日本のライスグラタン。バターライス、ベシャメルソース、そしてとろけたチーズが定番のスタイルを形作ります。本ガイドでは、その起源、定番の材料、よくあるバリエーション、日本で味わえる場所を紹介します。
ドリアとは?

ドリアは、焼いたご飯にベシャメルソースとチーズをのせたオーブン料理です。見た目はグラタンに似ていますが、ベースがパスタや野菜ではなくご飯なのが特徴です。日本では、バターライスやピラフにホワイトソースをかけ、チーズに焼き色が付くまでオーブンで焼き上げます。
ドリアは昭和初期に日本で生まれ、西洋のグラタン技法に着想を得て作られました。多くの人が想像するようなフランスからの輸入料理ではありません。今では気軽なファミリーレストランから高級ホテルのレストランまで、日本各地で提供されています。
地域や季節によってさまざまなバリエーションがあります。シーフードドリアはエビやイカを具に使うのが定番。鶏肉を使ったチキンドリアも日本のメニューでよく見かけます。カレー風味のドリアは、ご飯とソースの基本はそのままに、スパイスの効いたソースに置き換えたものです。
横浜での誕生

かつてフランス料理には、ドリア家にちなんだ名の料理がありました。19世紀のパリで貴族の客に供されたもので、トマト、キュウリ、卵を使った料理でした。名前は引き継がれたものの、日本のドリアとはまったく別物です。
横浜は1850年代に日本初期の国際港のひとつとして開港しました。外国人居留者や船乗り、外交官が住み着き、西洋の食習慣が持ち込まれます。地元の料理人たちはそれらを日本人の味覚に合わせてアレンジしました。こうした融合から生まれたのが洋食で、今も日本のメニューを代表する“西洋風のコンフォートフード”として定着しています。日本の洋食について詳しく知る。

現代のドリアの原型は、1930年ごろに登場しました。横浜のホテルニューグランド初代総料理長サリー・ワイルが、病気のヨーロッパ人銀行家のために考案したとされています。客は、やわらかくて食べやすいものを求めていました。
ワイルシェフはご飯にエビ、ベシャメルソース、チーズをのせ、オーブンで焼き上げました。温かく、やさしい味わいで、飲み込みやすい仕上がりに。その一皿が、今日日本で食べられているすべてのドリアの祖先となりました。
名前やソースの印象から、ドリアをヨーロッパの料理だと思う人も多いですが、実は日本で生まれた創作料理です。バターライスにエビのクリームやベシャメルソースをかけ、こんがりと焼き上げるのが基本。ホテルニューグランドでは今もオリジナルに近いレシピの一品を提供しています。食文化史の分野でも、横浜の食文化を象徴する例としてしばしば取り上げられます。横浜のご当地グルメを探す。
その後、ファミリーレストランがドリアをホテルの枠を超えて日常へと広めました。日本のファミレスチェーンは1970年代以降に急速に拡大し、洋食メニューを家庭的な食事として提供しながら、全国のメニューにドリアを載せるようになります。その変化によって、ホテルの名物料理だったドリアは、今ではほとんどの日本人家庭が知る一皿へと定着しました。
材料と味わい

ドリアの味わいは主に4つの要素で成り立っています。ベースとなるご飯は、バターライスにするか、ピラフにするのが一般的です。ソースを吸ってもべちゃっとしにくく、一口ごとの食感が保たれます。
ベシャメルソースが、この料理を決定づけるクリーミーさを生み出します。バター、小麦粉、牛乳で作り、味付けは控えめにするのが基本です。上にはチーズをのせ、オーブンの熱で焼き色が付くことで、香ばしく旨みのある“表面”が加わります。
具材(たんぱく源)は種類によって異なります。横浜の元祖レシピではエビが伝統的な選択肢です。鶏肉、カニ、ひき肉などもよく使われます。どの具材を使っても全体の風味は変わりますが、基本構造は同じです。
ドリア vs グラタン vs リゾット

この3つは混同されがちです。次の表で、実際の違いを確認しましょう。
| 料理 | ご飯を使う? | 主なソース | 調理方法 | 発祥 |
|---|---|---|---|---|
| ドリア | はい | ベシャメルソース | オーブンで焼く | 日本(横浜) |
| グラタン | いいえ(通常はパスタや野菜) | ベシャメルソース | オーブンで焼く | フランス |
| リゾット | はい | ブイヨン(少しずつ煮詰める) | コンロで煮る | イタリア |
ドリアは、いわば「ご飯のグラタン」です。伝統的なフランスのグラタンは、そもそもご飯を使いません。リゾットもご飯を使いますが、焼くのではなく、ゆっくり煮る調理法が大きな違いです。
ドリアの種類

日本各地のレストランでは、多彩なスタイルのドリアが提供されています。ここでは代表的なものを紹介します。
- エビとロブスタークリームのドリア:濃厚なロブスターソースにクリームソースを合わせた一品
- シーフードのトマトクリームドリア:エビ、イカ、ホタテをトマトクリームで仕上げたドリア
- 明太子とイカのドリア:枝豆クリームと合わせた定番の組み合わせ
- さつまいもと鶏肉のドリア:和風の甘じょっぱいミックス
- デミグラスハンバーグドリア:ハンバーグにデミグラスソースをかけて仕上げた一品
- チーズフォンデュハンバーグドリア:ハンバーグの上にとろ〜りチーズをたっぷり
- すき焼き風ドリア:牛肉と野菜をのせた、醤油風味のクリームソース
- ベジタリアンドリア:きのこや野菜のクリームソース、肉や魚介なし
- 子ども向けドリア:辛くないカレーやケチャップベースのソースで、ファミリーレストランで人気
ドリアの作り方

知っておきたいのは2つのバージョンです。クラシックなシーフードドリアは、えびとベシャメルソースを使う元祖の横浜スタイル。お手軽な家庭向けミートドリアはミートソースを使い、残りご飯とも相性抜群です。
クラシック・シーフードドリア
このバージョンは、シェフ・ワイルのオリジナルレシピに最も近いものです。えび、ベシャメルソース、バターライスが土台になります。昔ながらの洋食店では、今もこのスタイルで提供しているところが多いです。
お手軽・家庭向けミートドリア
こちらはより手早く作れて、身近な常備食材でできます。忙しい平日の夜や、残りご飯をおいしく活用したいときにぴったりです。
| 1人分の材料 | 分量 |
|---|---|
| 牛豚合いびき肉 | 80g |
| きのこ(ゆで) | 50g |
| ミートソース | 175g |
| 有塩バター | 10g |
| クミンパウダー | 7g |
| ご飯 | 200g |
| ピザ用チーズ | 50g |
| パセリ | 3g |
フライパンにミートソース、ひき肉、きのこを入れ、中火で温めます。焦げないように混ぜながら加熱してください。クミンとこしょうを加え、よく混ぜます。
耐熱皿にご飯を入れ、バター、塩、こしょうを加えてよく混ぜます。混ざったら、底全体に均一に広げます。
上にチーズを散らし、250°Cのオーブンで13〜14分、チーズに焼き色がつくまで焼きます。オーブンがない場合は、オーブントースターでも問題ありません。
こんがり焼けたら、仕上げにパセリを散らします。皿のまま、熱いうちにいただきましょう。
家庭ではいくつか代用もできます。指定のチーズがない場合でも、モッツァレラやピザ用チーズミックスならどちらもよく溶けます。前日の残りご飯のほうが、ソースをかけても形が崩れにくく、むしろ作りやすいです。
家庭で作る場合、1食あたりのコストは使うたんぱく質によっておよそ¥300〜¥500程度。外食よりはっきり安くなります。
ドリアが食べられる場所
ホテルニューグランド(横浜)
ドリア発祥の地で、現在もシェフ・ワイルが1930年に考案したオリジナルに近い一皿を提供しています。おすすめメニュー:エビドリア。価格帯:約¥2,500〜¥3,500。おすすめ:歴史ある王道の味を体験したい人。
レストラン香味屋(レストラン香味屋)

東京にあるミシュランガイドのビブグルマン選出店。おすすめメニュー:エビドリア(丁寧に仕上げた深みのあるベシャメルソースで知られています)。価格帯:約¥1,800〜¥2,500。おすすめ:王道の洋食が好きな人。
洋食・ワイン フリッツ(洋食・ワイン フリッツ)

こちらもビブグルマン選出店。赤坂で修業したシェフが独立して営んでいます。おすすめメニュー:ヨーグルトでマリネした鶏肉とトマトソースのチキンドリア。価格帯:約¥1,600〜¥2,200。おすすめ:気軽に、パンチのある味わいを楽しみたい人。
赤坂 津つ井(赤坂 津つ井)
食べログのトップ100にも名を連ねる名店で、箸で食べる洋食を提供しています。おすすめメニュー:カニドリア(たっぷりのカニとベシャメルソースで仕上げます)。価格帯:約¥2,800〜¥3,800。おすすめ:少し贅沢な夜を過ごしたい人。さらにカニ料理を楽しみたいなら、カニクリームコロッケとの組み合わせも相性抜群です。
まとめ
ドリアは、洋食を代表する料理のひとつです。西洋に着想を得た料理が、横浜で“本当の日本の味”へと定着しました。病気の銀行家のために急ごしらえで作られた一皿が、やがて全国的なコンフォートフードへ。今でも子どもから大人まで、ファミリーレストランや喫茶店、そして高級ホテルでも注文され続けています。
この料理ガイドを楽しめた方は、続けて日本の洋食と横浜のローカルフードシーンもご覧ください。
ドリア FAQ
ドリアは日本料理?それとも西洋料理?
ヨーロッパ風の名前や材料から想像されがちですが、この料理は日本で生まれた日本料理です。1930年ごろ、横浜のホテルニューグランドでシェフのサリー・ワイルが考案しました。洋食のカテゴリーに属し、つまり西洋料理を日本の味覚に合わせてアレンジしたものです。フランスやイタリア発祥だと思う人も多いですが、ベシャメルソースとご飯の組み合わせは日本ならではの発想です。
ドリアとグラタンの違いは?
クラシックなドリアは、ご飯をベースにするのが特徴です。一方、フランスのグラタンは基本的にご飯を使いません。代わりに、パスタやじゃがいも、野菜などがよく使われます。どちらもベシャメルソースと、焼き上げたチーズのトッピングは共通しています。地元では「ライスグラタン」と呼ばれることもあり、両者の重なりをうまく表した呼び方です。
ドリアにはどんなソースを使う?
家庭では、バター・小麦粉・牛乳で作るベシャメルソースが一般的です。具材(主菜)に合わせて、トマトクリーム、カレーソース、デミグラスソースに替えるアレンジもあります。焼く前にチーズをのせるのは共通です。ソースの違いで、やさしくクリーミーな味わいから、濃厚でコクのある味わいまで風味が大きく変わります。
海鮮なしでもドリアは作れる?
もちろん可能で、家庭版では海鮮を入れないことも少なくありません。主な具材は、ひき肉や鶏肉、野菜でもよく合います。ベジタリアン向けには、きのこや野菜のクリームソースを使うこともあります。トッピングが何であっても、「ご飯+ベシャメル+チーズ」という基本の構成は変わりません。
ドリアは通常、どのような場面で食べられますか?
この料理は、気軽な夕食や昼食、さらには自宅でのパーティーにも向いています。家庭では、残りご飯を使って平日の夜に作ることもよくあります。レストランでも、セットメニューのほっとする一品として提供されます。喫茶店、つまり昔ながらの日本のカフェでも、コーヒーや軽食と一緒に置かれていることが多いです。
ドリアにはどの種類のご飯がおすすめですか?
多くのバリエーションでは、普通の白ご飯で十分です。より複雑な味わいにしたい場合は、ピラフや炊き込みご飯などの味付きご飯を使うと、風味が増します。残りご飯はソースの下でも意外と崩れにくいです。炊きたてのご飯は、焼いた後に柔らかくなりすぎることがあります。
ドリアを作るときによくある失敗は何ですか?
最も多いのは、ベシャメルソースが水っぽくなることです。ご飯にかける前にソースをしっかり加熱すると、余分な水分が飛びます。焼き時間も重要で、焼き不足だとチーズが溶けきらず、焼きすぎると焦げてしまいます。レシピの時間をきちんと守れば、どちらの問題も避けられます。
参考文献
- Cwiertka, Katarzyna J. — Modern Japanese Cuisine: Food, Power and National Identity, Reaktion Books, 2006(学術資料、参照:2026年7月)
- Government of Japan — The Birth of Yoshoku: How It Transformed the Modern Japanese Diet(参照:2026年7月)
- Government of Japan — Family Restaurants: Supporting the Spread of Yoshoku in Japan(参照:2026年7月)
- Hotel New Grand — Official History Page(参照:2026年7月)
- Japan Travel (JNTO) — The Art of Yoshoku: Six Popular Western Dishes Reinvented in Japan(参照:2026年7月)
- Plenus Kome Academy — The Roots of Yoshoku: Beginnings of Western Cuisine in Japan(参照:2026年7月)
- BBC Travel — Japan’s Surprising ‘Western’ Cuisine(参照:2026年7月)
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