わざわざ旅をしてでも食べる価値のある店がある。ラッキーピエロ Lucky Pierrot は、まさにそのひとつだ。世界的なチェーンではない。東京や大阪で見つかることもない。全17店舗のすべてが、北海道最南端の小さな港町・函館にある。それなのに、これを食べるためだけに全国から飛行機でやって来る人がいる。
それだけでも、いろいろ察しがつくだろう。
ラッキーピエロとは?

ラッキーピエロは、1987年に函館で創業した地元発のハンバーガーチェーン。まさに「函館名物」ラッキーピエロのバーガー体験を体現している。特大サイズで、注文を受けてから作り、全国チェーンではまず出会えない唯一無二の存在だ。日経新聞は看板メニューを「日本一のご当地ハンバーガー」に選んだ。その評価は一過性のものではない。何年にもわたり、その評判を保ち続けている。
年間の利用者はおよそ180万人。人口24万人ほどの都市としては驚くべき数字だ。地元の人は日常的に食べ、観光客は“目的地”として訪れる。函館エリア外にラッキーピエロは存在しない。拡大の予定もない。それは制約ではなく、意図的な判断だ。
歴史:一人の男、一つのビジョン、一つの街
1987年、黄(オウ)一郎が最初のラッキーピエロを開いた。神戸出身の華僑系日本人で、函館へ移り住み、この街に惚れ込んだ人物だ。それ以前は中華料理店を営んでおり、その経験がメニューに長く影響を与えることになる。
当時の日本のファストフードは、お決まりの型に沿っていた。スピード、効率、回転率。マクドナルドやモスバーガーがテンプレートだった。黄は違うものを求めた。客にゆっくりしてもらい、楽しませ、訪れるたびに“体験”になるようにしたかったのだ。
「エンターテインメントだと思ってやっていた」と彼は語っている。17店舗それぞれが、まったく異なるテーマでデザインされた。世界の鳥をフィーチャーした店もあれば、イタリア・ルネサンスの画家サンドロ・ボッティチェリに着想を得た店もある。ハンバーガーの歴史を称える店もあれば、ハープを奏でる天使がいる店もある。どのラッキーピエロも、いい意味で本当に不思議だ。
注文してから作る方式も、もちろん意図的なもの。ここでは保温ランプの下で待つ商品はない。注文後に一つずつ組み立てる。少し待つ。数分かかる。だが運ばれてくるのは熱々で、できたてで、その一秒一秒に見合うものだ。
チャイニーズチキンバーガー:日本一のご当地バーガー

メニューの主役はチャイニーズチキンバーガー。日本のご当地バーガー大会で全国優勝している。売れ行きは他を大きく引き離す。
具体的にはどんなものか? 大ぶりのフライドチキンを3個、甘辛い中華風のタレで味付けし、シャキシャキのレタスとマヨネーズと一緒にふわっとしたバンズに挟む。高さは約14センチ、幅は約11センチほど。両手が必要だ。ナプキンもいる。たぶん1枚では足りない。
味は力強い。個性の核はタレにある。ほのかに甘く、少し酸味があり、しっかり旨い。チキン自体もジューシーで、下味もきちんと効いている。みずみずしいレタスの食感が、濃厚さをうまく切ってくれる。シンプルに聞こえる組み合わせだが、これを食べるためだけに函館へ来る人がこれほどいるのだから、明らかにただのシンプルではない。
中華の要素は、創業者の飲食店経験に由来する。このバーガーは、母親が来客のためによく作っていたフライドチキン料理に着想を得たものだという。その個人的な出自が、一般的なファストフードにはない温かみを生んでいる。
日本のフライドチキン文化をより広く知りたいなら、karaage pageで技法や歴史が詳しく紹介されている。ラッキーピエロのそれは独自路線だが、共通するDNAは確かにある。
ラッキーピエロのバーガーがユニークな理由

いくつもの要素が、このご当地バーガー Hokkaido local burger を、日本のファストフード界の他とは一線を画す存在にしている。
まずは食材調達。ラッキーピエロは、道南や北海道全域の農産物を使うことにこだわっている。最盛期には、食材の最大80%が地元生産者のものになる。フライに使われる北海道産のじゃがいもは本当においしい。ソフトクリームの乳製品も新鮮でコクがある。違いは味でわかる。
次にサイズ感。小ぶりで上品なバーガーではない。売上第2位のラッキーエッグバーガーは、目玉焼きとミートパティを組み合わせ、重量は約330グラムにもなる。メニューにはタワーバーガーもあり、地元のランドマークである五稜郭タワーを模したものまである。食べ始める前に作戦が必要になるタイプの食べ物だ。
3つ目はメニューの幅。ラッキーピエロは形式上はハンバーガー店だが、メニューはバーガーにとどまらない。カレーライス、オムライス、ラーメン、焼きそば、ハンバーグ、スパゲティ、ソフトクリームなど。日本の“定番のうまいもの”を集めたベスト盤のようだ。バーガー以外を頼んだ人が、同じくらいおいしいと感じることも多い。
4つ目はジンギスカンバーガー。函館や北海道は、羊肉を焼くジンギスカンで知られている。ラッキーピエロはそれをバーガーにした。ここだけ。函館だけ。こうした土地に根差したピンポイントさこそが、この店をこの店たらしめている。
ラッキーピエロが有名な理由

その知名度は、単一の要素では説明できない複数の要因が重なって生まれている。
拡大を拒んだことも、その一つだ。ラッキーピエロは成長できた。需要はあった。今もある。しかし黄は早い段階で、チェーンを函館にとどめると決めた。その判断が希少性を生んだ。ラッキーピエロは「わざわざ行かなければ食べられないもの」になった。ファストフードでは珍しい。そもそも飲食店全般でも稀だ。
受賞による後押しも大きかった。日経新聞がチャイニーズチキンバーガーを「日本一のご当地バーガー」と呼んだことは、静かな脚注では終わらない。話は広がった。わざわざ足を運ぶ理由を人々に与えたのだ。
各店舗の個性も一役買っています。どの店にもそれぞれ独自の“演出された”アイデンティティがあります。ラッキーピエロには「これが唯一の体験」というものがありません。訪れるたび、支店ごとに、少しずつ違うものを味わえます。
そして函館そのものが魅力的な目的地です。函館のフードシーンは本当に層が厚く、海鮮、塩ラーメン、朝市で見つかるイカ料理などのご当地名物を軸に成り立っています。ラッキーピエロは、地元の食のアイデンティティを真剣に大切にする街に、自然に溶け込んでいます。
この地域が提供する魅力をより広く知るなら、Hokkaido food guideとHokkaido local food articleのどちらも、ラッキーピエロを島内で最も敬意を集める食文化の伝統と並べて紹介しています。
ラッキーピエロで頼むべきメニュー

まずはチャイニーズチキンバーガーから。これはおすすめというより、論理的にそうするのが正解です。まずはなぜここまで話題になるのかを理解してから、他に広げていきましょう。
次に頼むなら、ラッキーポテトが外せません。チーズ、ホワイトソース、ミートソースをたっぷりかけたフライドポテトです。濃厚で食べ応えがあり、人気なのも納得です。
バーガー以外も試したいなら、チャイニーズチキンカレーがおすすめ。看板バーガーと同じ味付けのチキンを使っています。違う形でその風味を楽しみたい人には、堅実な第二候補です。
地元・北海道の牛乳で作るソフトクリームも、文句なしのハイライトです。シンプルでなめらか。思った以上に限界近くまで満腹になったであろう食事の締めにもぴったりです。
北海道でラッキーピエロを食べられる場所

全17店舗は函館エリアにあります。ベイエリア本店は元祖で、人気観光スポットの金森赤レンガ倉庫の近くに位置しています。函館駅前店は、電車やフェリーで来る旅行者にとって最も便利です。
行列は覚悟しておきましょう。必ずしも長いとは限りませんが、注文を受けてから作る方式なので、常に少し待ち時間があります。混み合うのは昼どきと夕方早めの時間帯。ピークを少し外すとよりスムーズですが、どのみち待つ価値はあります。
多くの店舗には英語メニューがありませんが、チャイニーズチキンバーガーなら指差しで十分通じます。スタッフは北海道外・日本国外からの来店にも慣れています。困ることはないはずです。
函館には、ほかにも訪れる理由がたくさんあります。朝市のIkasomenは、試す価値のある地元のイカ料理。塩ラーメンも絶品です。overall food culture of Hokkaidoは、掘り下げるほど面白さが増します。ラッキーピエロは函館から旅を始める最高の理由の一つですが、記憶に残る食事はそれだけではありません。
参考文献
- Hokkaido Love – Lucky Pierrot: Hakodate’s Unique Burger Chain: https://en.visit-hokkaido.jp/destinations/lucky-pierrot-hakodates-unique-burger-chain
- The Japan Times – Lucky Pierrot’s anti-McDonald’s approach: https://www.japantimes.co.jp/life/2023/04/02/food/lucky-pierrot-hakodate-local-burger-chain/









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