「鳥取県の冬の味」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは「松葉ガニ」。その初競りのにぎわいが全国ニュースで取り上げられると、「冬が来た」と感じる人も多いでしょう。松葉ガニは鳥取県の海の幸としてすっかり定着していますが、実はこのニュースが全国に届く頃、鳥取県の地元ではすでに「モサエビ」のおいしさを楽しむことができます。
モサエビの由来・歴史的背景
この日本のご当地グルメはとてもユニークな存在です。産地によって呼び名が変わるのが特徴です。モサエビという呼び名は山陰地方特有のもので、その見た目から受けるさまざまな印象から「モサ」と呼ばれるようになった、あるいは幻の豪傑にたとえられた、という説があります。モサエビの正式名称は「クロザコエビ」です。鳥取県では「モサエビ」と呼ばれますが、北陸地方では「ガスエビ」「ドロエビ」などと呼ばれ、日本海各地に根付いた水産物です。
鳥取県では、9月から5月にかけて沖合底引き網漁で漁獲されます。カニの漁期と大きく重なるため、どうしても陰に隠れた存在になりがちです。水温約5度、水深200〜250メートルほどの深場に生息しているため鮮度が落ちやすく、陸揚げから半日ほどで頭部が黒く変色し始めます。そのため、かつては漁師が船上で食べるものとされ、県内でもあまり流通していませんでした。

北国でよく食べられるホッコクアカエビと比べると、モサエビは強い弾力のある食感と、香ばしく旨みのある味わいが特徴で、甘エビよりも甘みが強いとも言われます。ただし鮮度が落ちやすく遠方への出荷が難しいため、地元でしか味わえない“幻のエビ”とされています。知名度が上がったのは、1990年代後半に岩美町が特産品として売り出してから。以降、生息域と同じ水温を保てる循環式の海水冷却装置が漁船に導入され、鮮度の良い状態での水揚げが増えました。
モサエビはどのようにして味わう?
その過程・楽しみ方

“幻”と呼ばれる理由は、傷みの早さやそれに見合う価格だけでなく、山陰地方の冬の味覚の王様である松葉ガニの漁期とも深く関係しています。モサエビは底引き網で漁獲されますが、冬場の鳥取の底引き船の多くは松葉ガニ漁を主な目的としているのです。陸揚げから半日ほどで頭が黒くなり始めます。どの程度傷んでいるかにもよりますが、食べられないわけではなく、鳥取市の寿司店「ささずし」には、頭が黒くなった状態のモサエビを刺身で食べたいと指名して注文するお客さんもいると言われています。そのほうが甘みが増すのだとか。傷みが気になる人にはあまりおすすめできませんが、味噌汁に入れてみるとよい出汁が出て、深いコクを楽しめます。
おいしいモサエビを選ぶコツは、身がピンと跳ねるように元気で、透明感のあるものを選ぶこと。鮮度が落ちると、身が白っぽくなって弾力もなくなるため、食べごろは短いのです。軽く水洗いしたら、頭と尾は残し、胴体部分の殻をむきます。刺身醤油と生わさびを添えてどうぞ。
このエビならではの特徴とは
茹で立てのモサエビの頭を取り、殻をむいて口に含むと、香り高くぷりっとした食感と、しっかりとした甘みが広がります。甘いのに、寿司ネタとして人気のある甘エビほどのねっとりした甘さではありません。モサエビの食べ方は多く、まずは刺身で味わうのがおすすめ。トロっとした甘エビに比べ、モサエビの刺身は身がしっかりとしていて、甘みと旨みのバランスが絶妙です。日本海ならではのおいしさを存分に堪能できます。

ワカメや豆腐が入った甘みのある味噌汁に、モサエビを入れて食べるのもおすすめです。エビの濃厚なうま味が味噌汁の出汁に溶け出します。頭の部分を軽く握って味噌をすすれば、モサエビのコク深い味噌と、味噌の磯の風味が一体となって、ほんのりとした甘みが口いっぱいに広がります。さらに、モサエビの腹の卵(腹子)を包丁でこそげ取り、頭の味噌と混ぜて味わうと、また格別のおいしさです。
エビのご当地ならではの味わい
モサエビは、さらっと煮た醤油ダレで軽く炊いた、地元ならではの味付けでも楽しめます。煮過ぎると身が固くなってしまうので注意が必要です。ほかに「塩焼き」にして味わう方法もあり、塩をふって手早く炙るだけのシンプルな料理ですが、エビ本来の風味が引き立ちます。
鳥取県栽培漁業センター(旧・鳥取県水産試験場)の研究により、モサエビにはタウリンが豊富に含まれていることが明らかになっています。タウリンはアミノ酸の一種で、モサエビの可食部100グラムあたり約160ミリグラム含まれています。タウリンは心臓や脳で重要な働きを担い、神経の成長をサポートするほか、高血圧症や心不全の人で過剰になりがちな交感神経の働きを抑え、血圧を下げることで心不全の改善に役立つ可能性があるとされています。また、加熱すると赤く発色する色素成分はアスタキサンチンと呼ばれ、強い抗酸化作用によって発がんを抑制し、血流をなめらかにすると言われています。
おすすめのモサエビ料理店
鳥取県内には、モサエビの魅力を存分に味わえる飲食店が数多くあります。ここでは、その中から特におすすめのモサエビが食べられるお店を紹介します。
むらかみ水産

鳥取駅から徒歩約5分。水産会社直営の居酒屋なので、新鮮な魚介料理を手頃な価格で楽しめます。とくにランチはコストパフォーマンスの良さから人気で、モサエビの入荷があるときにはランチメニューにも登場します。夜は地酒とともにおいしい海の幸をゆっくり味わうのもおすすめ。カウンター席と個室席があり、一人飲みにも向いています。モサエビの頭をすすれば、エビの新鮮な風味と味噌の甘みが口に広がります。海鮮メニューと日本酒の種類も豊富で、大広間もあるため宴会利用にも最適です。
たいき

たいきは超豪華な海鮮丼で人気のお店で、鳥取の海鮮丼としても高く評価されています。予約制で、正午ごろには売り切れてしまうこともあります。鳥取砂丘からすぐ近く、鳥取砂丘リフト駅から徒歩1分の場所にあります。こぢんまりとした店なので、通り過ぎてしまわないよう注意が必要です。「たいき」の文字が入った赤いのれんが目印。店の左側に増設された屋外席を含めても、入れるのは15人ほどです。
光臨舎(こうりんやしき)

ここは、獲れたての魚や地元食材を、全席完全個室で楽しめる居酒屋です。⟨br⟩提灯に照らされた京町家風の外観は、大人がゆったりくつろげる落ち着いた雰囲気。鳥取駅から徒歩10分ほどとアクセスも便利です。⟨br⟩モサエビを塩焼きにすると、しっとりとした身の甘みがぎゅっと凝縮され、さらに美味しくいただけます。強火で焼き上げるので、外はカリッと、中はとろっとした食感に。⟨br⟩完全個室なのでデートや会食にもぴったりで、商談などビジネスシーンで利用する人も多いお店です。
居酒屋 たけそう

この店はJR倉吉駅から徒歩約3分の場所にあります。こちらの居酒屋のメインは串焼きですが、炭火焼き料理や海鮮料理、一品料理も種類豊富にそろっています。モサエビの入荷があれば、迷わず注文したいところ。塩焼きもおすすめです。⟨br⟩串焼きのなかでも牛レバー串は必食。絶妙な焼き加減で、ボリュームも申し分ありません。⟨br⟩どの料理も安くておいしく、満足度が高いため、予約が取りにくい人気店です。
かに大陸

賀露港の近くにある「かに大陸」は、鳥取名物の松葉ガニをはじめ、新鮮な海の幸が楽しめるお店です。店長が魚屋を営んでいるため、直接仕入れた新鮮な海鮮を、リーズナブルな価格で味わえます。⟨br⟩海鮮好きの心を満たしてくれる、本場のモサエビ刺身も提供。大ぶりでぷりぷりの身を手頃な値段で食べられるのが魅力です。⟨br⟩モサエビの唐揚げも人気メニューなので、モサエビを味わいたいなら、ぜひ足を運んでみてください。







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