卓越したサシとやわらかさで知られる和牛は、日本の食文化において特別な存在です。日本では、和牛はサシの入り具合や肉質全体を評価する格付けシステムによってランク付けされます。これらの等級は、最高級の食体験を保証するうえで重要な意味を持ち、それぞれのランクが、最高品質の牛肉を育て上げ、提供するための並々ならぬこだわりを表しています。
和牛とは?

和牛は日本原産の牛の品種で、その高品質な牛肉で知られています。「Wagyu(和牛)」という言葉は「Japanese cow(日本の牛)」という意味で、「Wa」は日本、「gyu」は牛を表します。日本で3カ月以上肥育された牛、あるいは日本での肥育期間が最も長い牛は、すべて国産牛とされています。地元では、筋肉内に細かく脂肪が入り込む、独特の遺伝的特性を持つ牛として品種改良が行われてきました。これにより、肉のやわらかさ、多汁性、そして豊かな風味が生まれます。和牛は非常に高く評価され、世界でも最上級かつ最もぜいたくな牛肉のひとつと見なされています。和牛の飼育には、理想的なサシと品質を実現するため、特別な飼料や環境が用いられます。
日本各地には、それぞれ特徴の異なる和牛のブランドがあり、たとえば神戸牛や松阪牛などが有名です。それぞれに独自の個性やサシの入り具合があります。和牛の需要は世界的に拡大しており、他国でも和牛に似た特徴をもつ「和牛スタイル」の牛肉を生産するための繁殖プログラムが確立されています。
深く広がる味わい
初めて和牛を口にしたときのことを、今でもはっきりと覚えています。味わいは、とにかく濃厚で複雑。牛肉らしい旨味がしっかりあるのに、どこか繊細なのです。脂から感じられる自然な甘みには、本当に驚きました。くどさはなく、ふんわりとしたバターのような甘さが、いつまでも口の中に残ります。このサシが生み出す旨味の深さは、一般的な牛肉とは比べものになりません。「脂っこくて重いのでは?」と思うかもしれません。私も最初はそう心配していました。ところが実際は、べたつくようなしつこさはまったくなく、その代わりに贅沢なコクが広がって、少し罪悪感を覚えるほどの満足感があるのです。
口の中でとろける食感
その食感は、まさに別格です。信じられないほどやわらかく、ほとんど噛まなくても舌の上で溶けていきます。霜降りの脂が、あのシルクのように滑らかでバターのような口当たりを生み出しているのでしょう。初めて食べたときは、そのやわらかさに少し戸惑ったほどです。私がそれまで慣れ親しんでいた牛肉の食感とは、まったく別物でした。1枚1枚が、ほどけるように消えながら旨味を放っていく感覚があります。ただ、正直なところ、たくさん食べると人によっては「少し重い」と感じるかもしれません。私自身も、最初は少しそう感じました。
ほのかな香りの秘密
香りもまた独特です。生の状態でも、上質な和牛はほのかに甘く、フレッシュな香りがあります。いわゆる「血生臭さ」は、ほとんど感じません。加熱すると脂が溶け出し、濃厚なバターのような香りと、香ばしい牛肉の香りが溶け合います。決して強く主張する香りではなく、どこか上品で控えめ。その香りを嗅いだだけで、「特別なものだ」と思わされます。高級品という先入観も、多少は影響しているのかもしれません。しかし、ふわりと立ちのぼるあの甘い香りが確かに存在し、一口かじる前から期待感を大きく膨らませてくれるのです。
和牛の簡単な歴史

和牛の歴史は約3万5千年前にまでさかのぼり、この時期にはすでに、和牛系統としての遺伝的な分化が見られます。今日知られている近代的な和牛の品種は、日本在来牛と輸入牛との計画的な交配の結果として生まれました。この交配は明治維新後の1868年に始まり、西洋の食文化を取り入れようとした日本政府の方針のもとで進められました。その一環として、ブラウンスイス、デボン、ショートホーン、シンメンタール、エアシャー、韓牛などの品種が日本に導入されました。これら英国・ヨーロッパ・アジア由来の品種との交配は、1910年に外来遺伝子の流入が制限されるまで続けられました。
こうした和牛の多様性から、黒毛和種の三大系統である「但馬(田尻)系」「藤吉(島根)系」「気高(鳥取)系」が形成されました。これらの系統は、日本各地の地理的な隔たりによって独自の進化を遂げ、それぞれが和牛に固有の特徴をもたらしています。現在、日本の和牛の大半は黒毛和種で占められており、およそ9割がこれら黒毛系統に属します。残りの1割は「高知系」「熊本系」といった褐毛和種となっており、和牛が持つ豊かな多様性と歴史的な背景を物語っています。
和牛の種類
和牛と呼ばれるのは、「黒毛和種」「褐毛和種」「無角和種」「日本短角種」の4種類であり、それぞれに異なる特徴があります。
黒毛和種(Japanese Black beef)
和牛の約9割を占める黒毛和牛は、「神戸ビーフ」や「宮崎牛」などのブランド牛としても有名です。4種類の和牛の中では体格が比較的小さく、脂肪交雑(サシ)が入りやすい霜降り肉であることが大きな特徴です。
褐毛和種(Brown-haired Wagyu beef)
褐毛和種の代表格は、肥後牛や土佐和牛です。その赤みがかった色から「⟨1⟩あかげ牛⟨/1⟩」と呼ばれることもあります。赤身が多く、特に健康志向の方から人気の高い品種です。
見島牛
山口県萩市などで、地元の人々によって肥育されてきた和牛です。月に3~4頭しか出荷されない、非常に希少な品種です。赤身が多く、健康志向の人々に人気のある銘柄でもあります。
日本短角種
北海道のほか、青森・秋田・岩手などの寒冷地で肥育されています。省力化できることから放牧で育てられることが多く、和牛の中では最大級の体格を誇ります。一方で、肉質はやや劣り、赤身が多いという特徴もあります。
和牛の格付け制度
和牛の格付けとは、霜降りの度合い、肉の色、きめ、脂肪の質など、特定の基準に基づいて和牛の品質を評価する制度を指します。和牛の格付けを理解することで、調理法に合わせて最適な牛肉を選ぶことができるようになります。
歩留まり等級とは?

歩留まり等級とは、1頭の牛からどれだけの肉が取れるかを予測するための区分です。枝肉の左半丸について、第6・第7肋骨間で切断した断面のロース芯面積、バラの厚さ、皮下脂肪の厚さを測定して決定されます。これらの数値が高いほど、1頭から多くの肉を取ることができます。

日本食肉格付協会によると、歩留まり等級はA・B・Cの3段階に分けられており、Aが最も良く、Cが最も低い等級です。判定は歩留まり基準値の計算式で求められる数値によって行われ、72以上がA、69以上72未満がB、69未満がCと定められています。格付け結果は、歩留まり等級「A・B・C」と肉質等級「5・4・3・2・1」の組み合わせで表され、合計15段階に分類されます。
最も高い和牛の格付けはA5で、1頭から多くの肉が取れ、霜降りが豊かで、締まりが良く、色つやにも優れています。最も低い格付けはC1で、1頭から取れる肉の量が少なく、霜降りも少なく、締まりや色つやもあまり良くありません。しかし、シチューなどの煮込み料理やハンバーグにすることで、牛肉本来のうま味を引き出すことができます。
肉質等級とは?
肉質は「脂肪交雑(サシ)」「肉の色沢」「締まりおよびきめ」「脂肪の色沢と質」の4項目を評価して等級付けされます。等級は5から1までの5段階で、5が最上級です。4項目のうち最も低い等級が、その枝肉全体の等級となります。例えば、脂肪交雑・肉の色・締まり・きめが4等級でも、脂肪の色と質が3等級であれば、総合等級は3となります。
脂肪交雑(サシ)
「脂肪交雑」とは、いわゆるサシの入り具合を指します。12段階で評価され、「牛脂肪交雑基準(BMS)」に基づき5等級に区分されます。和牛ランキングにおいて、BMS No.8〜No.12が5等級、1等級はサシが少ないものとなります。

肉の色
肉の色と光沢は、ビーフカラー基準(BCS)に基づきNo.1〜No.7の7段階で評価されます。光沢は肉色の判定値に基づき、目視で評価・等級付けされます。5が最も優れ、1が劣る等級です。

脂肪の色と質
肉質等級のもう一つの基準が、脂肪の色と質です。脂肪の色はビーフファットスタンダード(BFS)に基づき7段階で判定され、光沢と質は目視で評価されます。

4月に登場した最新の和牛ブランド

北海道帯広市に拠点を置き、「豊西牛」で知られる農業法人・豊西ファームが、4月から新ブランド和牛「雪見和牛 ゆたか」の販売を開始します。この牛肉は、美しいサシが特徴で、食卓を贅沢に彩ってくれます。最大の特長は、そのおいしい霜降りで、ビーフマーブリングスタンダード(BMS)6以上という、上質な牛肉の証を備えています。「雪見」という名前は、十勝に降る粉雪のような美しい霜降りの見た目に由来しています。
高ランク牛肉のおすすめの食べ方
焼肉
焼肉には、サシが多く入った薄切りのカルビや肩ロースが適しています。モモ肉はよく運動する部位のため、やや歯ごたえがありますが脂肪分は少なめです。脂を控えめにしたい方におすすめです。
焼きしゃぶ
「焼きしゃぶ」は、薄切りにした牛肉をさっと炙り、塩やポン酢でいただく料理です。「肩ロース」はサシが入りやすく、その霜降りの美味しさを存分に味わえます。
ステーキ
おすすめのステーキ部位は、やわらかくきめ細かいサーロイン、サシがしっかり入ったロース、ランプ、ヒレなどです。特にヒレは、1頭の牛からわずか3%ほどしか取れない希少部位です。
テイクアウト

和牛のランクという場合、味ではなく、見た目を基準とした牛肉の品質評価を指します。評価基準は、肉の中にどのように脂が入っているかという「サシ(霜降り)」の状態に重点が置かれます。A5やA4といった高ランクの牛肉は、低ランクの牛肉に比べてサシが多いのが特徴です。ただし、ランクが高いからといって必ずしも「おいしい」と感じるかどうかは別問題で、味の好みは人それぞれ大きく異なります。
そのため、たっぷりとサシの入った牛肉が好みの方は、高ランクの牛肉を選ぶのがおすすめです。これらの部位は、焼肉、焼きしゃぶ、ステーキなど、シンプルな調理法にとてもよく合います。ご自宅で高級牛肉を楽しめば、その独特の風味とやわらかさをじっくり堪能できます。







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