十和田バラ焼きは、約60年前に青森県三沢市で生まれた郷土料理です。しょうゆベースの甘辛いタレに漬け込んだ牛バラ肉の薄切りと、たっぷりのスライス玉ねぎを鉄板で焼き、玉ねぎが薄いきつね色になるまで炒めて作ります。 その後、十和田湖のある十和田市でも定着しました。 十和田市は青森県の山間部に位置しています。 市は豊かな自然に囲まれ、十和田湖や奥入瀬渓流など、多くの観光名所があります
十和田市のソウルフード――十和田バラ焼き
十和田市には、この街のソウルフードと呼ぶほかない名物があります。十和田バラ焼きは英語にすると「Rose Bake(ローズ・ベイク)」とも訳されます。薄切りの肉と玉ねぎを、熱々の鉄板でジュージューと焼いて食べるシンプルな料理です。家庭でも作れますが、この料理の真価を味わうなら、やはり十和田市を訪れてお店で食べてみるのがおすすめです。現地に行けば、十和田バラ焼きが「熱い鉄板の上の肉と玉ねぎ」以上の存在だと実感できるはずです。

十和田バラ焼きの起源
バラ焼きの発祥は十和田ではなく、第二次世界大戦後に同じ青森県の三沢市で始まりました。当時の三沢は米軍基地があり、牛肉は高価だったため、基地の外の屋台が比較的安い部位を使い、地元の人々やアメリカからの来訪者に向けた料理を作ったのがきっかけです。この料理は試行錯誤の末に生まれ、人気はすぐに十和田市へと広がりました。友人や家族が鉄板を囲み、おしゃべりをしながら食事を分け合ったといいます。現在、市内にはこの料理を提供する屋台や飲食店が60軒以上あります。子どもからお年寄りまで幅広く親しまれ、十和田市民のソウルフードとして愛されています。

箸で十和田バラ焼きを食べる
十和田バラ焼きを食べて楽しむ:ジュージュー焼ける卓上体験
鉄板が置かれた瞬間
甘口か辛口かの選択は些細に思えましたが、実はすべてを左右します。私は甘口にしました。ほどなくして、テーブルに埋め込まれたバーナーの上に、鋳鉄の鉄板が運ばれてきます。薄切りの豚肉と玉ねぎがすでにたっぷりのっていて、ジュージューと音を立て、湯気を上げる様子に目が離せません。料理を「出された」というより、小さなバーベキューを自分のために手渡されたような感覚でした。
ここからはあなたが焼き手
初めての人はここで驚きます。焼き加減の管理は自分次第。タレは熱い鉄板であっという間にカラメル化するので、肉を絶えず動かすことが想像以上に重要です。肉を鉄板に直接置くのではなく、玉ねぎの層の上にのせて焼くのがポイント。野菜が熱をやわらげ、下でゆっくりと味がまとまっていきます。

ひと口目が運んでくるもの
甘いタレが艶のあるグレーズのように一枚一枚に絡みつき、縁はカラメル状に香ばしく、それでいてしっかり旨味も感じます。玉ねぎはほとんど溶けるようになり、奥の方で静かな甘さを添えてくれます。重たさやくどさはまったくありません。食べている途中でも立ちのぼる香りが何度も意識をさらっていき、どこかスモーキーで、本当に甘い――熱く語りすぎずに表現するのが難しい香りです。
ゆっくり楽しもう
十和田バラ焼きに急ぐ必要はありません。ゆっくり食べ、こまめに混ぜ、タレがいちばん得意な仕事をするのを待ちましょう。丁寧に向き合うほど満足度が上がり、最後の数口がいちばんおいしいこともよくあります。
十和田市はどこ?
十和田湖の近くにある十和田市は、おいしい十和田バラ焼きを堪能するのにぴったりの行き先です。ただし、十和田市は青森県の山間部に位置しています。そのため、東京からは距離があり、この街へ行くには飛行機を利用するか、高速の新幹線で移動する必要があります。

十和田湖は驚くほど美しい湖で、屈指の観光名所のひとつです。湖の景色を味わいながら十和田バラ焼きを楽しむのは、とても素敵な体験になります。

十和田バラ焼きを食べるなら
十和田バラ焼きは、市内のあちこちで手頃な価格で気軽に楽しめます。十和田でおいしいバラ焼きを味わえるおすすめスポットを見つけましょう。
大昌園食堂(Taishoen Shokudo)
1963年創業の老舗焼肉店で、本場の十和田バラ焼きを770円で提供しています。11:00〜15:00のランチセットは、ご飯と味噌汁が付いてお得です。鉄板の上で牛肉と玉ねぎがジュージューと焼け、甘辛いタレが全体に絡んでいく様子を眺めるのも魅力のひとつ。ボリュームも十分ですが、バラ焼き定食はランチ時間帯以外は提供されない場合があるため、訪れる時間帯が重要です。
司バラ焼き大衆食堂(Tsukasa Barayaki Taishu Shokudo)
現代美術館の近くに位置するこの人気店は、地元の人にも観光客にも支持されています。牛の十和田バラ焼きランチは1,650円、豚は1,430円で、どちらもご飯のおかわり無料に加え、サラダ、漬物、小鉢が付きます。名物のタワー型の盛り付けは、最初に玉ねぎを焼き、その上に牛肉を重ねて自分で焼くスタイル。火加減の調整でジューシーに仕上がります。なお、日曜の夜と月曜は休みになることが多いので注意してください。
Oirase Beer Brewery & Restaurant(奥入瀬ビール ブルワリー&レストラン)
ここで提供される十和田バラ焼きは、B-1グランプリで金賞を受賞したタレ「ヴェルサイユのバラカッタレ」を使用。単品1,100円、5品が付くストリームプレートは1,540円です。十和田産のにんにくとりんごで作られたタレが、熱々の鉄板で提供されます。クラフトビールとのペアリングも見どころ。場所は奥入瀬エリアのため、市街地から車で向かう場合はアクセスの詳細を事前に確認しておくと安心です。
御食事処 神田川(Oshokujidokoro Kandagawa)
こちらの湖畔の食事処では、十和田湖を望みながら、十和田バラ焼きをはじめ比内地鶏や桃豚も味わえます。バラ焼きは鉄板焼きスタイルで提供。煮干しラーメンや釜炊きご飯もメニューに並びます。夏は涼しく、冬は雪景色が楽しめる湖畔のロケーションは、家族連れにも心地よい雰囲気を与えてくれます。
道の駅とわだ・とわだぴあ(Michi-no-Eki Towada, Towadapia)
この道の駅では、お土産を見ながら気軽に十和田バラ焼きを試せます。タレをまとった牛肉と玉ねぎは熱々で、ボリュームも十分。周辺には温泉や観光スポットが多く、ドライブ途中の立ち寄りにも便利です。9:00〜19:00の営業時間はランチにもディナーにも対応。食事メニューは日替わりになることがあるため、バラ焼きの提供状況は事前に電話で確認するのがおすすめです。
まとめ
十和田バラ焼きは、最初からこちらを驚かせようとするタイプの料理ではありません。ジュウジュウと音を立てて運ばれてきても、派手な盛り付けもなく、複雑な食べ方の指示もない。ただ牛肉と玉ねぎ、そして何十年もの試行錯誤と、飢えの実感の中で磨かれてきたタレがあるだけです。
いちばん意外だったのは、体験としての「関わり」の深さでした。あなたはただ食べるのではない。肉の縁が濃いキャラメル色に変わっていくのを見守り、途中で調整しながら向き合っていく。小さなことですが、それが食事の届き方を変えます。
この旅は本当に行く価値があるのか、と迷うかもしれません。十和田市は青森の山奥にあり、たどり着くにはそれなりの労力が要ります。その疑問はもっともです。けれど近くには十和田湖や奥入瀬渓流があり、この街はバラ焼きだけではありません。そして不思議なことに、料理は「本当に生まれた場所」で食べると、どこか違って感じられるのです。
十和田バラ焼きは、ある問題を解決するための工夫として始まり、やがて地元の人々が街を離れたあとも持ち続けるものになりました。そうした持続力は、作ろうとして作れるものではありません。60年以上かけて勝ち取るか、そうでないかです。







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