やわらかく、見た目も華やかで、クリーミーな食感を楽しめるデザートが好きなら、ミルクレープのことをぜひ知っておきましょう。何層にも重なった薄い生地でできたこの背の高いケーキは、世界中で人気を集めています。この記事では、このスイーツが特別な理由や、意外な誕生秘話を紹介し、自宅でこのモダンクラシックを作るためのレシピも詳しく説明します。
ミルクレープとは?

Mille Crêpes という名前はフランス語で「千枚のクレープ」という意味で、このデザートの大きな特徴である高さを表しています。このデザートは、たくさんの極薄の平らなパンケーキ(クレープ)を、丁寧に重ねて作るケーキのようなスイーツです。
仕上がったミルクレープには、一般的に12〜20枚ほどの紙のように薄いクレープが使われ、それぞれの層の間には、軽いバニラ風味のホイップクリームがやさしく塗られます。口に入れると、ふわっととろけるようなやわらかさを目指して作られており、クリームの水分が繊細なクレープをほどよくしっとりさせ、心地よいソフトな噛みごたえを生み出します。このやわらかなクリームと薄いクレープ層とのバランスこそが、多くの人に愛される最大の理由です。
一層ごとに広がる繊細な甘さ
ひと口食べた瞬間、本当に驚きました。とても軽いのです。甘さが一気に押し寄せるのではなく、薄いクレープとやわらかなバニラクリームが、そっとささやくように広がります。最初に感じるのはやさしいミルクの甘さで、そのあとにクレープ生地からくるほのかなバターのコクが続きます。上品で控えめな味わいなので、一層一層がどう重なっているのかを味わいながら、自然とゆっくり食べたくなります。最初は少し物足りないかなと思うほどですが、食べ進めるうちにじわじわと満足感のある味わいになっていきます。

とろけるような、やわらかな噛み心地
このデザートが真価を発揮するのは、なんといっても食感です。こんなに層が多いと重たく感じそうですが、実際はまったく違います。クリームでしっとりしたクレープは、噛んだときにほんの少しだけシルクのような抵抗を見せ、それからすっと溶けていきます。空気を含んだクリームとやわらかなクレープが、ひと呼吸だけぎゅっとまとまってから、舌の上でほどけるように消えていくのです。しっかりした食べごたえがありながら、信じられないくらい繊細という、見事なコントラスト。これほど独特の食感は、他ではあまり出会えないと思います。
ほのかに香るバニラとバター
香りは静かで、どこか安心感があります。バニラのあたたかい香りと、焼きたてのクレープから漂うほんのり卵の風味が、やわらかく混ざり合っています。どれかが強く主張しすぎることはありません。フォークを入れて層がほどけると、香りがすこしだけ深くなります。洗練されていながらもどこか懐かしい、静かな朝のパティスリーを思わせる香りです。派手さはありませんが、その控えめさが、繊細な味わいととろける食感をより引き立てています。
日本で生まれたミルクレープ

フランス語の名前を持つ層状スイーツ、ミルクレープは、実は1988年に日本で、パティシエの関根俊成氏によって考案されました。関根氏は、喫茶店向けに満足感のあるケーキを作りたいと考えており、それまでの小さなクレープのミルフィーユではボリュームが足りないと感じていました。そこで着想を得たのが、意外にもイタリア料理のラザニアでした。重ねるという発想は惣菜でも有効なのだから、スイーツにも応用できるはずと考え、12〜13枚の薄いクレープをクリームとともに重ねていき、現在のMille Crêpesを特徴づける、背の高いケーキ状のスタイルを生み出したのです。
このケーキが大きく知られるようになったきっかけは、ドトールコーヒーショップが全国販売用として採用したことでした。膨大な需要に応えるため、関根氏は1993年ごろ、冷凍でも品質を保つための大きな工夫を行います。解凍してもクリームとクレープの繊細さが損なわれないよう、焼き方や配合を調整したのです。こうして商品化されたミルクレープは、1996年にドトールによる全国発売が始まり、Mille Crêpesは日本中で大ヒット商品として定着しました。
レシピ

ミルクレープ作りは、オーブンで焼くケーキとは違い、薄いクレープ生地を丁寧に焼き重ねていく作業が中心になるため、とても作りがいのあるお菓子です。仕上がりの質は、正確な計量と、クレープを薄く均一に焼き上げるための正しい手順に大きく左右されます。
| 材料 | 分量(グラム) |
| 薄力粉(クレープ生地) | 510 g |
| 牛乳(クレープ生地) | 1021 g |
| 無塩バター(溶かす/クレープ生地) | 113 g |
| 卵(Lサイズ/クレープ生地) | 8個 |
| 生クリーム(フィリング) | 340 g |
| グラニュー糖(フィリング) | 75 g |
作り方
ボウルに薄力粉、卵、砂糖を入れてなめらかになるまで混ぜ、そこに牛乳と溶かしバターを加えます。その後、生地は必ず冷蔵庫で1時間以上休ませてください。休ませることでグルテンが落ち着き、生地がゆるんで、薄く伸ばしても破れにくいやわらかなクレープに仕上がります。
フラットなノンスティックパン(またはクレープパン)を弱火で熱します。少量の生地を流し入れ、すぐにフライパンを回して底全体に極薄く広げます。縁がきつね色になってきたら裏返し、反対側もさっと焼きます。焼き上がったクレープは皿に重ねて移し、完全に冷ましておきます。
クレープ生地とクリームがよく冷えたら、組み立てを始めます。お皿の上にクレープを1枚置き、その上にホイップクリームを薄く均一に塗ります。次のクレープをそっと重ね、すべての生地を重ね終わるまで繰り返します。組み立てが終わったら、ケーキは数時間冷蔵庫で冷やしてください。この冷やす時間がとても重要で、クリームがしっかりと固まり、同時に水分によってクレープがほどよく柔らかくなり、全体が一体化した理想的なケーキの食感が生まれます。
まとめ
ミルクレープは、フランス菓子の技法に、イタリアのラザニアから着想を得たアイデアが組み合わさって生まれた、意外な起源をもつ現代的なデザートです。関根シェフの発想の巧みさと、その後の量産技術の発展により、この繊細な層状のケーキは、複雑な見た目と軽やかで心地よい食感を両立させた日本の洋菓子を象徴する存在となりました。その人気が続いていることは、手間ひまをかけて丁寧につくられ、なおかつ食べて楽しいスイーツが世界中で愛されることの証といえます。
ミルクレープの幾重にも重なる食感とほのかな甘さに魅力を感じた方は、繊細な構造やクリーミーな層を楽しめるほかのデザートにもぜひ挑戦してみてください。















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