日本でミルクレープがカフェの定番になった理由(と、最初に食べるならここ)

Delicious Mille Crepes with fresh berries served in a Japanese cafe setting.

初めて東京のカフェのショーウィンドウでミルクレープケーキを見たときのことを、今でもよく覚えています。紙のように薄い生地が何十層もきれいに重なり、その断面はまるで木の年輪のようにはっきり見える。あまりに繊細で、食べるのが惜しくなるようなケーキでした。

今では、日本のあちこちでミルクレープを見かけます。コンビニ、デパ地下、住宅街の小さなカフェ…。チーズケーキと同じくらい身近な存在になりましたが、それでもどこか特別感がある。不思議なケーキです。では、なぜミルクレープケーキは日本で人気なのでしょうか?そして、もし初めて食べるなら、どこからどう始めればよいのでしょう?

日本風ミルクレープとは?

名前の由来はフランス語です。“Mille”は「千」を意味しますが、実際に千層のミルクレープを私は見たことがありません。大抵は20〜30枚ほどのクレープで構成され、それぞれの間に薄くカスタードクリームが挟まれています。カットすると断面に黄金色の層が縞模様のように現れ、その見た目の良さがこのデザートを一躍“映える”存在にしています。

では、日本版は何が違うのでしょうか?それは「アプローチ」です。フランスのミルクレープはどっしりリッチなものが多いのに対し、日本のパティスリーはそれをより軽やかで繊細なものへと洗練させました。重厚さよりも、精密さとバランスを重んじるスタイルです。

Mille Crepes cake served with tea, showcasing Japanese cafe dessert culture.Japanese-Style Mille Crepe

食感、甘さ、層の数

クレープ生地は、ほとんど透けて見えるくらい薄くあるべきです。パティシエがミルクレープ用の生地を焼く様子を見たことがありますが、破かずにそこまで薄く仕上げるのは意外と難しそうでした。層と層の間に挟まるクリームも、思ったより軽い口当たりのものが多いです。多くの店では生クリームをカスタードクリームに混ぜて、何口食べても重く感じない、ふんわりとした食感を作り出しています。

甘さは控えめです。アメリカ風のケーキに慣れている人からすると、日本のミルクレープは最初、かなり淡く感じるかもしれません。でもそれは意図的なもの。バター、卵、牛乳といった素材そのものの風味を、砂糖でごまかさずに活かすことを大切にしているのです。

では、層の数はどのくらいが良いのでしょう?20〜30層くらいがちょうどよいバランスのようです。40〜50層のものも食べたことがありますが、正直なところ、少しやり過ぎに感じました。きれいにカットしづらくなり、生地とクリームのバランスも崩れてしまいます。多くの店が20〜30層前後に落ち着いているのには、きちんと理由があるのです。

日本で広く受け入れられた理由

Popularity of Mille Crepe in Japan

広まり始めたタイミングも重要でした。ミルクレープが日本で見かけられるようになったのは2000年代。ちょうどInstagramやフードフォトが盛り上がり始めた頃です。このデザートは、とにかく写真映えします。層がきれいに見える断面、幾何学的な整った形、皿にのった一切れの佇まい——まさに「撮ってください」と言わんばかりのビジュアルです。

とはいえ、見た目だけが理由ではありません。なぜミルクレープケーキが日本で人気なのかを理解するには、日本の文化そのものを見る必要があります。このデザートは、日本の「職人技」や「細部へのこだわり」という価値観と完璧に噛み合いました。おいしいミルクレープを作るには、時間と技術が要ります。急いで作れるものではありません。一枚一枚のクレープを丁寧に焼き、クリームも均一に塗り重ねる必要があります。こうした技術的な挑戦こそ、日本の菓子文化が好むものなのです。

カフェ文化と「かわいい・きれいなデザート」という発想

日本のカフェには独特の美意識があります。ラテアートからデザートの盛り付けに至るまで、すべてが美しくなければいけない、という感覚です。ミルクレープは、まさにその世界観にぴったりはまります。気取りすぎず、それでいて上品で、きちんと手がかかっていることが伝わるデザートです。

食べるときの「所作」にも、どこか特別なものがあります。席に座り、コーヒーを頼んで、一口一口ゆっくり味わう。甘さが強すぎないので、急かされるような感じも、途中で疲れてしまう感じもありません。日本のカフェ文化が大切にする、少しゆっくりとした、丁寧な時間の流れに寄り添ってくれるデザートなのです。

やがてカフェ同士が「一番フォトジェニックなミルクレープ」を競うようになりました。季節限定フレーバー、カラフルな層、凝ったトッピング…。ホールケーキをオーダーメイドで作ってくれる店も出てきました。ミルクレープは「カフェに行く楽しみ」の一部となり、単なる“食後のデザート”以上の存在になっていったのです。

Mille Crepe

コンビニのミルクレープ vs パティスリーのミルクレープ

日本に引っ越してきて驚いたことの一つが、「セブンイレブンでミルクレープが買える」という事実でした。しかも1個300円前後。そして……これが、けっこうおいしいんです。

もちろん、コンビニのミルクレープと、ちゃんとしたパティスリーのミルクレープでは、大きな差があります。でも、どちらにもそれぞれの良さがあります。仕事帰りにサッと甘いものをつまみたいだけのときもあれば、じっくり味わう特別な一皿が欲しいときもあるでしょう。

何が違う?クリーム、生地、そして価格

一番大きな違いはクリームです。コンビニのものは、数日間棚に置いておけるよう、安定剤入りのクリームを使っています。悪くはありませんが、違いははっきり分かります。パティスリーのクリームは、たいてい毎日作られるフレッシュなもので、本物のバターや質の良い乳製品を使用。後味が軽く、口の中にまとわりつくような重さがありません。

クレープ生地そのものも、コンビニ版の方が厚めです。パッケージや輸送で崩れないよう、ある程度の強度が必要だからです。職人が作るクレープは、ほとんど透けるほど薄く焼かれます。この薄さが繊細な食感を生みますが、その分ケーキ自体は壊れやすくもなります。

お値段はというと——コンビニの一切れはおおよそ250〜400円。カフェで食べる一切れは600〜1,000円ほどでしょうか。専門店のホールケーキは3,500円前後からで、北海道産クリームや高級な季節フルーツなどを使うと、さらに高くなります。

個人的なおすすめとしては、「まずはコンビニ版から試してみる」のが良いと思います。気軽に買える値段ですし、ミルクレープがどんなものか感覚をつかめます。ただ、このデザートが本当に愛されている理由を知りたいなら、あるいは特別な日の一品として楽しみたいなら、ぜひパティスリーのものを選んでみてください。

はじめてのミルクレープ、どう選ぶ?

カフェのショーケースの前で、5種類ものミルクレープを前に悩んだことがあります。抹茶、いちご、チョコレート……どれを選べばいいのか、しばらくじっと眺めてしまいました。

もし初めてなら、まずはプレーンやバニラ味から試すのがおすすめです。余計なフレーバーに邪魔されず、基本のおいしさをしっかり味わえます。クリームの質、クレープの食感、全体のバランスがよく分かります。多くのお店には、その店の実力を示す「シグネチャー」や「クラシック」といった定番メニューがあります。

抹茶 vs いちご vs チョコレート

いろいろ試してみたくなったら、まずはこの3つのフレーバーに出会うことが多いはずです。

Delicious green tea Mille Crepes with fresh berries and mint garnish, showcasing popular Japanese de.

抹茶は、おそらく最も「日本らしい」選択肢です。おいしい抹茶ミルクレープは、心地よいほろ苦さと、クリームのコクを引き締めるような土っぽい香りが感じられます。他のフレーバーより甘さは控えめで、個人的にはそこが大好きなポイントです。ただ、抹茶ならではの風味があまり得意でない人には、最初の一品としては向かないかもしれません。もし可能なら宇治抹茶を使ったものを探してみてください。品質の差がはっきりと分かります。

Delicious Mille Crepes cake topped with strawberry and blueberry, showcasing Japan's popular cafe de.

いちごは季節限定で、たいてい冬から春にかけて登場します。おいしいものは、いちご風味のクリームだけでなく、層の間に本物のいちごスライスが挟まれています。一口かじると、クリームとクレープに加えて、フレッシュな果実のはじけるような食感と香りが広がります。断面の一層一層に赤い果肉が見えて、見た目も華やか。万人に受けやすい、一番「ハズレの少ない」フレーバーと言えるでしょう。

Mille Crepes cake with multiple thin layers and chocolate topping.

チョコレートは最も濃厚なタイプです。ココア入りのクレープにバニラクリームを合わせるお店もあれば、チョコレートのパティシエクリームを使うお店、両方を重ねるお店もあります。本格的なチョコレート好きにはたまりませんが、繊細なクレープの食感を少し覆い隠してしまうこともあります。個人的には、チョコレートの風味は「ガツン」と強いより、やや控えめなくらいがバランスよく感じられます。

このほかにも、季節限定フレーバーがいろいろ登場します。ほうじ茶、柚子、栗、マンゴー、ティラミス…。日本のパティスリーは新しい組み合わせに挑戦するのが大好きで、正直、それも楽しみの一つです。

おうちで簡単に作る方法(初心者向け)

正直に言うと、ミルクレープを家で作るには時間がかかります。でも、見た目ほど難しくはありません。テクニック自体はシンプルで、特別な道具も必要ありません。焦げ付きにくいフライパンと、泡立て器、そして少しの忍耐があれば十分です。

市販のミルクレープを食べて「どうして日本でこんなに人気なんだろう」と思ったことがあるなら、自分で一度作ってみると、その魅力がもっとよく分かります。どれだけの精度が求められているのか、そしてパティスリーのケーキが高めの価格になる理由も、きっと実感できるはずです。

クレープ生地を作る

まずはシンプルな配合から。牛乳2カップ、卵3個、小麦粉1カップ、溶かしバター大さじ2、砂糖大さじ2、塩ひとつまみ。これをダマがなくなるまでよく混ぜ、冷蔵庫で少なくとも30分休ませます。生地を落ち着かせることで、よりなめらかなクレープになります。

フライパンを中火で熱します。生地をおたま約1/4カップ分流し入れ、すばやくフライパンを回して薄く広げ、片面を約45秒焼きます。そっとひっくり返し、もう片面をさらに20秒ほど焼きます。最初の数枚はうまくいかなくても大丈夫。そのうち上手になっていきます。

焼き上がったクレープは、1枚ずつオーブンシートを挟みながら重ねておきます。組み立てに入る前に、必ず完全に冷ましてください。温かいままだと、クリームが溶けてしまうのでここはとても重要です。

クリームフィリングを作る

まず基本のパティシエクリームを作ります。牛乳1カップと砂糖1/4カップを鍋で温めます。別のボウルで卵黄2個とコーンスターチ大さじ2を混ぜておき、そこに温めた牛乳を少しずつ注ぎながら手早く混ぜます。全部を鍋に戻し、絶えずかき混ぜながら、とろみがつくまで火を通します。

火から下ろしたら、バニラ小さじ1とバター大さじ1を加えて混ぜます。表面にぴったりとラップを張り付けるようにして覆い、完全に冷やします。よく冷えたら、生クリーム1カップをしっかりと泡立ててからパティシエクリームに混ぜ込みます。こうすることで、食感が軽くなり、何層も重なる間に挟んでも重たく感じにくくなります。

組み立てと冷やし固め

組み立ての工程では、とにかく丁寧さと根気が大事です。平らな皿かケーキスタンドの上にクレープを1枚置きます。クリームを大さじ2〜3ほど取り、クレープ全体に薄く均一に塗り広げます。クレープをもう1枚重ね、同じ作業を繰り返します。

クリームの層は、できるだけ毎回同じ厚さにそろえましょう。思っている以上に重要なポイントです。この均一さこそが、ミルクレープならではの「クレープとクリームの理想の比率」を生み出します。重ね終わったら、ケーキ全体をラップで包み、少なくとも4時間は冷蔵庫で冷やします。一晩おくとさらによくなじみます。

おいしく仕上げるカットのコツ

カットには、温めた清潔な包丁を使いましょう。包丁をお湯で温め、水分を拭き取ってからカットします。1カットごとに刃を拭くと断面がきれいに保てます。ノコギリのように動かすより、まっすぐ上から下へスッと下ろすほうがきれいに切れます。焼いている途中でクレープが少しくらい破れてしまっても気にしないでください。見た目のきれいなものを外側の層に使えば、中のほうはどうせ見えません。そして、まずは20層くらいを目標にしてみましょう。作り方に慣れてきたら、その次にもっと層を増やせばいいのです。

まとめ:ミルクレープが日本で人気の理由

では、なぜミルクレープは日本で人気なのでしょうか。それは一つの理由だけではありません。カフェ文化の広がり、SNSの影響、日本人のクラフトマンシップへの敬意――そうしたものが重なり合った絶妙なタイミングで、このデザートが登場したからです。写真映えする美しさがあり、上手に作るには本物の技術が求められ、しかも西洋風のケーキより軽く、甘さも控えめです。

手に取りやすさも人気を後押ししています。まずはコンビニスイーツとして数百円で試してみて、気に入ったら特別な日のご褒美としてパティスリーのものを選ぶこともできます。あるいは、自分で一から作ってみて、きっちりと積み重なったあの層に、まったく新しい尊さを感じるのもいいでしょう。

コンビニで見つけるにせよ、高級パティスリーで出会うにせよ、ミルクレープは日本のデザート文化をよく表しています。派手な見た目よりも、細部へのこだわりと素材の良さを何より大切にする姿勢です。見た目と味の両方を満たしつつも、決してくどくなりすぎない。そのバランスのよさが、日本のカフェシーンにしっかりと根付いた理由と言えるでしょう。

次にカフェのショーケースで、あの特徴的な層が重なったケーキを見かけたときには、何を前にしているのかきっと分かるはずです。どれだけの精度が必要なのか、抹茶・いちご・チョコレートといったフレーバーの選択肢、そして一見シンプルなクレープの重なりが、なぜ一国をとりこにするほどの存在になったのかも理解できるでしょう。もしかしたら、思わず一切れ買ってしまうかもしれません。あるいは、家で自分なりの一台を仕上げてみるのも良いかもしれませんね。

Delicious Mille Crepes with fresh berries served in a Japanese cafe setting.

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

Please share this post!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください