とちひめ(Tochihime):栃木県でしか出会えない希少ないちごの宝物

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栃木県を訪れたら、絶対に食べてほしいいちごの品種がひとつあります。その名は「とちひめ」。その体験は格別です。想像してみてください。深い真紅の果実、信じられないほどみずみずしく、口いっぱいに広がる甘さ。ですが、ここに落とし穴があります。とちひめは栃木県のいちご生産のわずか0.2%しかありません。だからこそ、本当に特別なのです。

なぜそんなに希少なのでしょうか?答えは、果実の驚くほどの繊細さにあります。皮があまりにも柔らかく、市場へ出荷するのはほぼ不可能。栽培されている地域のいちご狩り農園や、道の駅・直売所などでしか出会えません。今回は、とちひめがわざわざ探してでも味わう価値のある理由を、余すところなくご紹介します。

とちひめの基本情報

とちひめは、栃木県農業試験場(栃木県農業試験場)で1990年に育成が始まり、1998年に品種登録されました。名前には複数の意味が込められています。「栃木県」の「とち」、土地を表す言葉にかけた「とち」、そして「姫」を意味する「ひめ」です。

この品種は、観光農園や直売所での直接販売向けに特別に作られました。果皮が非常に柔らかく、少し触れただけでも傷みやすいのが特徴です。その脆さゆえ、長距離輸送は現実的ではありません。栃木県内でも栽培する農家はごくわずか。生産量がそれを物語っています。県内のいちご総生産量の、たった0.2%に過ぎません。

とちひめの特徴

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とちひめは見た目からして目を引きます。艶のある濃い赤色で、一粒一粒が輝いて見えるほど。形はきれいな円錐形で、一般的な「とちおとめ」よりも明らかに大きめです。中には500円玉ほどの大きさに育つものもあり、本当に見事です。

味わいは「女峰」に匹敵する甘さを持ちながら、酸味が驚くほど控えめで、甘さが口の中を支配します。果肉は鮮やかな深紅で、果汁もたっぷり。ひと口目から、ほかのいちごでは味わえない体験が待っています。口の中に果汁があふれ出すような感覚です。

果肉の柔らかさは特筆すべき点です。ナイフは必要ありません。指でそっと押すだけで実がつぶれるほどで、時には簡単すぎると感じるほどです。商業流通が難しい理由が、まさにここにあります。

栽培面では、株がシーズンを通して継続的に花房をつけます。促成栽培では、4月下旬までに1株あたり600g以上収穫できることもあります。ただし欠点もあります。苗が病気に弱く、定植した苗の半数以上を失ってしまうこともあるのです。

とちひめの歴史と開発

とちひめの物語は1990年、栃木県農業試験場の研究者が新しいいちご品種の開発に着手したところから始まります。

母親には「とちみね」を選びました。大果で食味が良い品種です。父親は「久留米49号」で、こちらも大粒で多収が特徴。興味深いことに、後に開発された「とちおとめ」ではこの組み合わせが逆になっています。つまり、とちひめととちおとめは、いちごの世界で言えば姉妹のような関係なのです。

1990年の交配で194株の実生が得られました。その中から、優れた特性を示す個体を選抜。ある有望な個体は「90-13-3」と命名されました。

1993年には「栃木13号」という系統名で本格的な試験が開始されました。研究者たちは、さまざまな条件下での栽培適性を調べ、特性評価も詳細に行いました。

1997年には、いちご狩り農園や直売所向けの試験栽培が実施されました。この段階で結論が明確になります。市場流通には不向きだが、観光農業(アグリツーリズム)には理想的な品種だ、ということです。

そして1998年、種苗法に基づく品種登録の申請が行われました。名称は「とちひめ」に決定。「栃木県」の「とち」、地域性を示す「ち」、そして果実の美しく繊細な性質を表す「ひめ」を反映した名前です。

とちひめと他品種の比較

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とちおとめとの比較

Tochiotomeは栃木県を代表する品種で、長年にわたり日本で最も生産量の多いいちごとして知られてきました。この2品種の最大の違いは、親の組み合わせが逆である点にあります。

見た目では、とちおとめは鮮やかな赤色で、種の周りのくぼみが浅いのが特徴です。一方、とちひめはより濃い赤で、サイズも明らかに大きく育ちます。並べて持つと重さの違いがはっきり分かります。

味の傾向も興味深い違いがあります。とちおとめは糖度が10度Brix近くまで上がり、適度な酸味とのバランスが取れています。甘さと酸味の掛け合いがあるため、何粒でも飽きずに食べられます。とちひめは糖度が約8度Brixで、糖度自体はやや低めですが、酸味がほとんどないため、強い甘さを感じさせます。

食感の違いが最も分かりやすいポイントです。とちひめは格段に柔らかく、よりジューシーに感じられます。果汁の多さはとちおとめ以上で、口の中でとろけるような感覚が味わえます。

旬のピークもわずかに異なります。とちおとめは11月から6月に出回り、1月〜2月が最盛期。とちひめは12月から5月で、最も品質が良いのは2月〜4月です。

価格は希少性と手間の違いを反映します。とちひめは、とちおとめの約2倍の価格になります。とちおとめが1粒あたり約100円だとすると、とちひめは1粒あたり約200円程度が目安です。

淡雪との比較

Awayukiは熊本県の品種で、いちご栽培に対するまったく異なるアプローチを示しています。その特徴はとちひめと鮮やかな対照を成します。

色の違いが最も分かりやすい点です。とちひめの濃い赤に対し、淡雪はクリーム色から淡いピンクの色合い。淡雪という名前は「淡い雪」を意味し、その繊細な色味を見事に表しています。

風味を比較すると、興味深い違いが見えてきます。淡雪は糖度が12〜15度(Brix)に達します。とちひめの8度と比べると、かなり甘いと言えるでしょう。どちらも酸味は控えめですが、淡雪はより洗練された、なめらかな甘さを感じさせます。

食感も異なります。淡雪はクリーミーな質感で、舌の上でとろけるようにほどけます。一方、とちひめは果汁が弾けるようにあふれ出し、口いっぱいにみずみずしい甘さが広がります。

両品種には重要な共通点があります。それは流通が極めて限定的だということ。果肉がやわらかいため傷みやすく、販売は農園直売や高級フルーツ専門店に限られています。

価格帯にも共通点が見られます。淡雪は1粒500〜1,000円で販売される一方、とちひめは1粒あたり約200円ほど。どちらも一般的ないちごの価格を大きく上回りますが、淡雪のほうがよりプレミアムな位置づけです。

栽培地域ははっきり異なります。とちひめは栃木県のみで栽培されています。淡雪の栽培は熊本県が中心で、福岡県や奈良県でも少量が生産されています。

とちひめを体験できるレストラン

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いちごの里(小山市)

いちごの里は、栃木県小山市で人気のアグリツーリズム施設として運営されています。スローライフリゾートのコンセプトを掲げ、年間を通してフルーツ狩り体験を提供。希少なとちひめを含む、5品種のいちごを楽しめる特別プランも用意されています。「ストロベリーピッキング DELUXE」プランでは、スカイベリー、とちおとめ、とちあいか、とちひめ、ミルキーベリーを1時間かけて食べ比べ可能。味・食感・香りの違いをゆっくり比べながら、自分のお気に入りを見つけられます。施設内にはビュッフェレストラン「いちご一会」とカフェ「アンジェ・フレーゼ」があり、どちらも新鮮ないちごを使ったスイーツを提供しています。

住所: 栃木県小山市大川島408(〒323-0058)
電話: 0285-33-1070
ウェブサイト: https://www.itigo.co.jp/

高橋農園 釜川店(宇都宮市)

高橋農園 釜川店は、宇都宮市中心部のオリオン通り近くに、2021年11月にオープンしたいちご専門カフェです。自社農園で完熟させたいちごを使った、そびえ立つフルーツパフェで注目を集めました。いちごの季節には、貴重なとちひめを贅沢に盛り込んだパフェも登場。バージョンによっては、いちごのハーフが37個入るものもあり、圧巻の見た目です。店内はカウンター席とテーブル席に加え、珍しくキャンプテント風の席もあり、スタイリッシュな雰囲気。完熟のいちごを収穫し、その日のうちに提供するというこだわりにより、とちひめを最高の甘さと鮮度で味わえます。テイクアウトのいちごサンドも人気です。

住所: 栃木県宇都宮市江野町11-6 麦倉中央ビル2F(〒320-0802)
電話: 070-8979-6409
ウェブサイト: https://farm-takahashi.jimdofree.com/

アグリの郷(栃木市)

栃木市大塚町にあるアグリの郷は、実際にとちひめを自分で摘み取れる貴重なスポットの一つです。東北自動車道・栃木ICから車で約15分とアクセスも良好。大型ハウスが複数あるため、時期によってはほぼ貸切のような感覚で楽しめることもあります。とちひめ狩りは事前予約制で、通常のとちおとめ・とちあいかのプランより200円高くなりますが、その価値は十分。30分間食べ放題で、農園自慢の大粒で甘いとちひめを堪能できます。肥沃な土壌で育ったいちごは、強い甘みとそろったサイズ感が特徴です。栃木市中心部の歴史ある蔵の街散策や、太平山への観光と組み合わせるのにもぴったり。幻のいちごを心ゆくまで味わえる、贅沢な体験が待っています。

住所: 栃木県栃木市大塚町128-1(〒328-0007)
電話: 0282-27-0882
ウェブサイト: https://agurinosato.net/

まとめ

とちひめは、栃木県の農業の歩みの中でも特別な存在です。深い赤色の果色、大きさ、そして驚くほどのジューシーさが際立ちます。やわらかな果皮のため商業流通が難しく、生産量は県全体のわずか0.2%にとどまっています。

姉妹品種のとちおとめと比べると、とちひめはより大粒で、酸味が少ない味わいです。熊本の淡雪は白い見た目とプレミアムな立ち位置でラグジュアリーさを演出する一方、とちひめは濃い赤い果肉と豊富な果汁で力強い魅力を届けます。どちらも並外れた希少性を備えています。

1990年の交配から1998年の品種登録まで、開発には8年を要しました。アグリツーリズム向けに特化して設計されたこの品種は、今もなお熱心なファンを惹きつけ続けています。

栃木県を訪れる機会があれば、この幻のいちごを味わうことを最優先にしてみてください。産地でしか出会えない鮮度、果汁とともに口いっぱいに広がる甘さ――とちひめとの出会いは、季節が終わったあとも長く心に残る思い出になるはずです。

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