越前ガニ、いわゆるズワイガニは、毎年11月6日から3月20日までのシーズンに豊富に水揚げされます。このカニは、水揚げされる越前の海岸線にちなんで名付けられました。なかでも特に珍重されているものが「ズワイガニ」であり、この料理のブランドとしては唯一、毎年欠かさず皇室に献上されています。
越前ガニの身の質が非常に高く評価される理由の一つは、漁獲された瞬間から陸揚げされるまで、船上で低温に保たれていることにあります。腸や卵巣部分にある褐色の身「カニ味噌」は、適切に保管しないとすぐに鮮度が落ちてしまい、この料理の魅力である濃厚な味わいも失われてしまいます。
他産地のカニと区別するため、ひとつひとつのカニには、越前沖で水揚げされたことを証明する黄色いタグが取り付けられています。シーズンの始まりには、国外からの観光客も含め、多くの旅行者がこの地域を訪れます。
極上の海の幸の王様・越前ガニ

越前ガニは、その味わいと品質の高さから「極上の海の幸の王様」とも称され、一度味わうと何度でも食べたくなる魅力があります。日本海沖の水温が下がるにつれ、カニは寒さに備えて身にたっぷりと脂をたくわえます。その頃合いを見計らって水揚げされ、食卓へと運ばれます。
越前ガニの歴史
京の高官・三条西孝によって、811年3月20日付の日記に越前ガニの記述が残されています(安土桃山時代)。これが、この名称が文献に現れた最も古い例と考えられていますが、地元の人々はそれ以前から食していたとされています。いつ頃から一般的な料理になったのか、正確な時期は分かっていません。
この地域の漁村では、現在の福井県沖の深い海で、この貴重な甲殻類を漁獲することが古くから生業となってきました。江戸時代(1603〜1867年)には、日本海の深く冷たい海でカニを獲るための独自の漁法が発達しました。
やがて越前ガニは高い名声を得て、朝廷や有力な武家への献上品となりました。地元の大名たちは、自らの富と権勢を示すため、越前ガニを貴重な贈り物として用いたのです。
明治時代(1868〜1912年)になると、交通網の整備により国内各地へ出荷されるようになり、高級海産物としての評価がいっそう確立されました。
地元産カニの本物性を守り、飲食店による質の劣る代用品の提供を防ぐため、1989年には黄色いタグによる識別制度が導入されました。このタグ付け制度により、越前ガニが長年築き上げてきた高い品質基準とブランド力が維持されています。
現在も越前ガニは、日本を代表する冬の味覚のひとつとして高い人気を誇り、厳しい漁獲規制によってこの文化的・食文化的な宝が持続的に守られています。
匠の技で丁寧にゆで上げる

越前ガニは漁場の環境だけでなく、ゆで上げる工程にも、並々ならぬこだわりと高度な技術が求められます。ゆでる際には、火加減を見極めるタイミングや塩加減を細かく調整し、カニ本来のおいしさを引き出します。福井県には「良いカニかどうかを見極められるようになるまで十年、理想的なゆで方を極めるには一生かかる」という言い伝えがあります。ゆで上げを任される料理人は、まさに職人と呼ぶにふさわしい存在です。
越前ガニに付けられた三つの呼び名
オスのズワイガニは「越前ガニ」と呼ばれ、メスは「セイコガニ」または「ミズガニ」と呼ばれます。メスは脱皮後の身がやわらかいのが特徴です。この三つはそれぞれ漁期が異なり、味わいにも個性があります。
主な調理方法

一般的には越前ガニはゆでガニとして提供されますが、ほかにもさまざまな調理法があります。生の身を味わう刺身は「カニ刺し」、炙って香ばしさを引き出した焼きガニは「焼きガニ」、薄切りのカニをさっと湯にくぐらせてから、だし醤油ベースのたれでいただく料理は「しゃぶしゃぶ」と呼ばれます。こうした調理法を用い、料理人たちは長年かけてそれぞれ独自のレシピを磨き上げ、個性豊かな地元料理を生み出してきました。
一杯ごとの大きさ
最大級の個体では全長が50cmほどにもなり、甲羅の幅はおよそ

14.5cm、重さは最大約1.3kgに達します。メスはこのおよそ半分ほどの大きさで、価格も大型のオスに比べると手頃です。
越前ガニを味わえるイベント
越前ガニを気軽に味わったり購入したりできるイベントも多数開催されており、飲食店で食べるよりも比較的リーズナブルな価格で楽しめることが多くなっています。主なイベントとしては、ハピテラスで開かれる「越前若狭紅白味まつり」があります。12月に開催される「あらなみフェスタ」ではセイコガニ汁を味わうことができ、クリスマス前に行われる「越前海岸水仙・カニ祭り」では、土産物や漁師鍋などが販売されます。11月中は特に週末を中心に各地でカニにまつわる催しが開かれ、3月の週末には、「越前かに感謝祭」や「三国湊かに祭り」といった代表的な祭りが行われます。
越前ガニを味わえるおすすめの店
ヤマニ水産
福井県内でも有数の景勝地・東尋坊に店を構えるヤマニ水産では、越前ガニだけでなくさまざまな海の幸を味わうことができます。土産物の購入はもちろん、店頭に並ぶカニの中から好みの一杯を選んで食べることも可能です。定食、ラーメン、一品料理などのメニューのほか、オンラインで注文して配送してもらうこともできます。
福井ぼんぼろ青山店

越前がにの聖地として知られる三国港は、かにの水揚げで有名な漁港のすぐ近くにあります。えちぜん鉄道三国芦原線の前には巨大なかにのオブジェがいくつも設置されており、観光客に人気のスポットです。ここでは、刺身・焼きがに・ゆでがにを一度に味わえる「越前がにフルコース」がおすすめです。そのほか、新鮮な海鮮料理や海鮮丼も楽しめます。
望洋楼
この料理店は歴史が古く、三国湊の廻船問屋をルーツとしています。明治時代(一八六八年〜一九一二年)には料理旅館として創業し、「望洋楼」の名で知られてきました。日本海を望む素晴らしい景観と、極上の越前がに料理が評判です。現在は東京・青山にも支店があり、都内でも同じ味わいを楽しむことができます。非常に人気の高い店のため、事前予約をしておくことをおすすめします。
滝乃川
滝乃川は、越前の海岸沿いを走る国道305号線沿いにあります。一年を通して地元越前の新鮮な魚介が味わえ、冬のシーズンには越前がに料理も楽しめます。そのほか、ふぐやかきなどの料理も提供しています。越前がにを存分に堪能するにはフルコースがおすすめで、試食的なコースから「越前カントリーメインコース」まで、八種類のコースが用意されています。
こばせ
料理旅館こばせは越前の海岸沿いに建ち、日本海を望む絶景が楽しめます。料理の質の高さで知られ、「かに」のシーズンには日本各地から多くの人が訪れます。一部の料理は予約が必要なため、事前に問い合わせるのが安心です。宿泊も可能で、朝食にかに雑炊を味わうこともできます。
海の幸食処えちぜん
海の幸食処えちぜんは、国道305号線から越前漁港へ入る地点にあります。越前町漁協が運営している食事処で、「越前がに定食」が特におすすめです。A・B・Cからフルコースまで各種セットが用意されており、事前予約をすれば大人数での利用も可能です。海沿いドライブの途中に立ち寄るのに便利な立地です。











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